『ハッピーアワー』と比べるなんて馬鹿げたことなのは分かっているのだけど、どうしたってそれは考えてしまう。が、麦との時間よりも亮平との時間を長く割いて、それでもどちらが夢で、どちらか誠か分からなくなるというのを、淡々と描いたのはこれまでの監督らしさかもしれない。しかしそれをーー自身の作家性さえ打ち壊すようなーードラスティックな展開で魅せてくれたのは、これからの濱口竜介に不安を持たせるものではあるかもしれない。最も観客に媚びるような演出ではないから、まだまだ期待してもいいのだろうけれど。しかしこの映画の誤算はふたりがリアルに不倫してしまったことだろう…