かよりん

望郷のかよりんのレビュー・感想・評価

望郷(2017年製作の映画)
5.0
人知れず自分の心の中に秘めた辛い思いや苦しい過去や葛藤に対し、自ら振り返り向き合うことで見えてくる「光」。
この映画は、そんな自分自身の過去や故郷に想いを寄せ、見つめ直すきっかけとなる「光」を与えてくれる作品だと感じました。重い話だけど最後は心が温かくなります。

菊地監督の描く物語の舞台となる因島の風景が、各シーンごとに違う姿を映し出していて、それが物語に説得力を持たせていたように感じました。
特に光と影の使い方が上手いなぁと思いました。ラストの方の進水式のシーンも効果的で迫力があって素晴らしかった。

湊かなえさんの原作を読んでからの映画鑑賞でしたが「夢の国」と「光の航路」それぞれをより深く表現しつつ、とても上手く繋げている脚本がさすがだなぁと思いました。
原作とは設定が変わっているシーンもいろいろありましたが、どれもすんなり心に入ってきてすごくよかったです。

「夢の国」は観ていて胸が苦しくなるような重い話ですが、貫地谷しほりさんと木村多江さんが素晴らしかった。舞台挨拶で目の前で見た綺麗で華やかで可愛らしい貫地谷さんが、スクリーンの中ではまるで正反対の苦悩を抱えた夢都子を見事に演じてました。木村多江さんもさすがでした。

「光の航路」は映画ならではのシーンも多く、大東駿介さん演じる航が亡くなった父との過去に向き合い、教師として悩みながらも成長する姿が原作よりもしっかりと描かれていてすごくよかった。
大東駿介さんが細かい表現力や表情で、航の心情の変化を見事に演じてました。

映画の主題歌のmoumoonさんの「光の影」が映画にすごく合っててとてもよかったです。
エンドロールで流れるこの曲が心の中に心地よく響いて、映画の余韻にじっくりと浸ることが出来ました。

9月16日(土)公開初日を迎える新宿武蔵野館を皮切りに、全国の劇場で順序公開されるので、たくさんの人にぜひ観てもらいたい作品です。
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