やまだ

さよならの朝に約束の花をかざろうのやまだのレビュー・感想・評価

3.7
試写会にて鑑賞しました。
結論としては良い映画でした。

中世ヨーロッパのような世界観で、その絵は圧巻です。美術さんすごいなぁと………
ファンタジーではありますが、街並みは某都市を思わせるものであったり
音楽を奏でるシーンで用いた楽器はリュートやハーディガーディであったりと
実在する世界のピースもこの映画の世界には取り込まれています。
そのためどこか既視感のあるような、親しみのあるものとして見ることができます。
またそういった既視感のある景色を見せることで、この作品のテーマは我々の生活と地続きのものであるといったメッセージがあるように感じました。

血の繋がっていない家族の愛をテーマにした映画では「そして父になる」が有名でしょうか
あちらは主に親の葛藤を描いたものであるのに対し本作では親、子、その他人物の葛藤も全て描いているため全体的には「情そのもの」がテーマであるようです。
行為で示す情、内に秘めた情、さらには「人外」と認めた者には差別し利用することも厭わない人間の業とも呼べるものも描いていました。

ストーリー展開としては王道というか、ある程度推測されるとおりに進みます。
同じ時間を過ごしているのにそのスピード感が違うという点では「ベンジャミン・バトン」と近いものがありますが
あちらとは違った方向でしたね。
2時間ありますが、ぎゅっと詰め込んでいるので間延びしているとは思いませんでした。
人によっては詰め込み過ぎと思うかもしれません。
個人的に中盤の進め方や成長したエリアルの描き分けが曖昧な点が気になりました。
「お前まだ若いのにそんな!……あ、違うのか」となりました。

でも私は「テンポが良い」と受け取りました。

演出においては、細かい所作はたっぷりと描き
セリフは逆に削ぎ落としてる印象です。
説明くさいセリフを入れがちなシーンも、表情と「そっか…」の一言で察せられるようにする。
個人的にはこのやりかたのほうが好みです。
その点アニメーターや声優さんの表現力が試されるので、ここまでやり遂げた皆様には感服しました。
あと音楽、作品の印象を決めると言ってもいい劇伴は最高でした。サントラ出たら買います。

岡田さんが脚本をされた作品は全部見ましたが、その中ではぶっちぎりで一番好きです。
もちろん他もいいんですけどね。

全力フルスイングで泣かせにくるので私も泣いてしまいました。
演出的に「ここで泣いてくれ」感はあるのでそういうのを好まない方以外は泣いてしまうと思います。

良い映画でした。
やまだ

やまだ