Kamikami

ヴィクトリア女王 最期の秘密のKamikamiのレビュー・感想・評価

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即位50年を迎えた晩年のヴィクトリア女王とインド出身のムスリムの青年であるアブドゥル・カリムの交流を描く、実話に則った作品。

一番の見どころは老境に差し掛かって退屈な毎日に倦んでいた女王が、従僕となったアブドゥルの影響で心の若々しさを取り戻したこと。彼女がインドやアラビアに関する文化を教えるアブドゥルを「ムンシ(教師)」と慕う姿はどこか少女のようだった。原題の「Victoria & Abdul」が示す通り、単なる女王と従者の関係ではなく、出自や立場、年齢の壁を越えた個人と個人の交流をどこかユーモラスに本作は描いている。

時に笑いあり涙ありの本作だが、決して綺麗な内容ばかりではなく、時代的に避けては通れない当時のインド人への偏見も描写されている。アブドゥルが出世することを快く思わないバーティ皇太子や王室使用人の姿も描かれる。彼らも決してただの悪人というわけではないが、人種や地位に囚われず個人の人格や才能を評価する女王と対比されており、女王の賢明さの引き立て役に留まっている。
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