SatoshiFujiwara

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

4.3
ポスターなどのビジュアルデザインがウェス・アンダーソンっぽいとも言える独特の色調でいかにも惹かれるものがあり、かつそのウェス作品にも何本か出ている名優ウィレム・デフォーが出演してるんでふらっと観に行ってみたら、なんのことはない、これは傑作ではないか。

子役がすごい。特にビッチなママであるヘイリーの娘ゆえかたまに汚ねえ言葉を平気で吐く女の子ムーニー役の子は天才的で、あれはほんまに演技なのかという位の役の「生き方」であり、一体どんな演技指導というか演出を監督は行っているのだろうか。

フロリダはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの間近にあるモーテル暮らしをしているヘイリーとムーニー。一見毎日を楽しそうに暮らしているようにも見えるものの、その日暮らしの生活はバッタもんの香水を売り付けたり人からパクったディズニーワールドのチケットを転売したり、挙げ句の果てにはその場面自体は全く描かれないものの売春すら行うようになり、モーテルの賃料もこれらで賄っている始末。普通に考えればなかなかに厳しい状況ながら辛気臭さが1ミリもない。本作を包み込むこのあっけらかんとした明るさ、オプティミズムはなんだろうか。子供目線ゆえとも言えるだろうが、これが大変すばらしい。

フロリダとの題名を見ずとも、これがアメリカの西海岸や南の風土のリゾート地にほど近い場所の物語だということは何となく分かるように画面ができているが、しかしそれはヘイリーやルーニーたちにとっては直近ながらまるで違う世界の話だ。それだけに、映画のほぼ最後で売春が当局(?)にバレてしまってまさに連行されようとしているヘイリーの元から思わず前後不覚になって逃げ出してしまうルーニーが、その親から付き合いを止められている友達の子ジャンシーと一緒にディズニーワールドの中に入って行くラストに心打たれないものはいないだろう。ここには独特の画面処理が施されていて全体の中では浮いているのだが、果たしてこれは現実なのかどうか。シーンの繋ぎからは当然現実にみえるのだけれど、しかしこのそこはかとない非現実的な展開はムーニーとジャンシーの脳内妄想のようにも感じる。現実生活のいたたまれなさを子供ながらに当然気付いているだろうムーニーが駆け込んで行く、不意に視界に飛び込んで来るディズニーワールドには、しかし本当の幸せがあるわけではない。それはムーニーも観客も痛いほどに分かっているはずなのに、あそこで言うに言われぬ幸せを感じてしまうのはなぜなんだろうか。

夢の国ディズニーワールドのすぐ傍らにモーテル「マジックキャッスル」があるように、ヘイリーとルーニーらのいかにも素敵なアメリカ的楽天性のすぐ傍らには優雅な絶望が顔を覗かせている。もちろん、監督のショーン・ベイカーはそんなことを今さら声高に訴えかけはしない。