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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のtomoのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます


(端的に言ってしまうと)モーテルに暮らす子どもの視点から描かれた作品。ホームレスほど貧しくはないけれど、ちゃんとした家を借りられる程はお金がない。状況はシリアスなはずだけれど、この作品の世界は鮮やかで、眩しくて、美しい。
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子どもたちはあらゆる事に楽しみを見つけて日々彩りに満ちているし、毎日が冒険で無限に広がっていくよう。
"モーテル"に暮らしているという時点でダークで疲弊してそうな印象を持ってしまうんだけれど、舞台となるモーテルは外壁がラベンダーカラーで、周りの店もいちいちポップで可愛い!(このポスターみたいな配色!)
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主役の女の子は仲の良い友達と悪戯をして遊んでいて、まさしく"無邪気"のかたまり。無邪気だから、悪戯しても仲良くなれるし、度を超してしまったことで友達と引き離されてしまう。天真爛漫でとっても可愛いんだけど、どこまでも行くし、倒れてても育つ木がお気に入りって言うし、なんかこの環境で育ってきた強さや逞しさも感じる。エネルギーがすごい。
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母親は雇ってくれるような所も無くて、要するに社会不適合なんだけど、自分勝手に生きながらも子どもとこの生活のことは守ろうとしている。親子というより、歳が離れた姉妹にも見えるし、どうしようもない生活にも思えてしまうんだけれど、いつも仲良くて、2人の絆がちゃんとあって、なんかそれだけで安心する。
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そしてウィレム・デフォーがとっても良くて!!管理人として厳しい人で、この母親のことも子どものことも叱るし、見捨てる人じゃない。いつもどこかに優しさの余地がある人。住人たちにうるさく言うけれど、外からの恐怖や脅威から守ろうとしてくれる人。この人がいるからモーテルはゆるくもちゃんと秩序が保たれているし、住人は貧しいながらも心地よく生活ができるんだろうなあ。この人の眼差しから色んな気持ちが見て取れて、そのたび心が揺さぶられちゃったよね。
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終盤、児童保護とか家庭調査みたいな名目で親子が引き離されそうになって、そこで母親は叫び、子どもは泣きそうな顔で逃げ出して、2人ともこの作品で初めて見せる表情で感情を爆発させる。感情の波が押し寄せてきて、こっちまでたちまちつらくなる。そして逃げ出した女の子が縋った時の友達のあの表情とか眼差しの強さにやられちゃう。あれこそ"希望"で。あのエンディングで白黒付けられちゃうと生きていける気がしない。
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こういう意識の外や見えていないものに意識を傾ける、目を向けることって、忘れそうになるんだけど、ちゃんと気づくように、考えるようにしなきゃって思う。この作品の強烈なメッセージを前面に押し出してくるわけじゃないけれど、意志はちゃんと秘めている感じ、そういうバランス感覚はやっぱりとても好き。
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