Nao1996

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のNao1996のレビュー・感想・評価

4.0
これはイイ。
なんともキャラの掘り下げ方が上手いことか、ヘイリーとムーニーの演技が光ってるなぁ…ボビー役のウィレムデフォーのどこか容赦してあげちゃう優しい支配人も冴え渡ってる。感情移入できるできないとかでこういう映画を判断するのではなく、実は社会派な作品としてアメリカ全体、ひいては世界全体を見渡したほうがいいのではないかと思ってしまう…
色鮮やかなフロリダの夏晴れの空に反射するカラフルな道沿いのモーテルや店、夢の世界のようなこの場所で起こっている現代アメリカの貧困問題にフォーカスを当てていく。とあるモーテル暮らしの母子家庭の問題点がこの映画で火を見るより明らかになる。もちろん職がないこともそうだが、ヘイリーの学のなさも影響していることは疑いようもない。ムーニーは一番身近な母親、ヘイリーとテレビの言葉で生活し、その知識で生きていくのだからこの生活が何世代にも渡って繰り返される可能性は高い。実際にアメリカの貧困家庭はその日暮らしを余儀なくされるが故にこういったモーテル暮らしが起こっているのは事実。
最後に、フロリダに雨が降ったシーンはムーニーの心理の転換点だったろう。最後になるかもしれない食事は豪華にとって、役人の判断を静かに待つ。彼女なりの覚悟が胸を打つ。トラッキングショットでラストに、ムーニーとジャンシーを追いかけるのは辛い現実から夢の国の理想へ最終的には向かえることを願ってのことなのだろう…ポップで色鮮やかな画からなんとも社会派なアメリカらしい作品。
Nao1996

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