あお

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのあおのレビュー・感想・評価

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たっぷり3時間半。「図書館とは本の置き場ではなく、知識を得たいと思う人々が主役の場所である」という、携わった建築家の言葉。ニューヨーク公共図書館の目指す姿をあらわした本質的なひとことで、最も印象に残っている。

レファレンスだけでなく、子どもへの学習指導やプログラミング教室、高齢者に向けたパソコン教室、求職者への就職フェア、リサイタル、講演会、点字・音訳、ポケットWi-Fiの貸与……など図書館の空間が担っている役割の多さを再認識した。それは日本でもそうだけれど、作中たびたび挟まれるスタッフ間での会議シーンでは「ニューヨーク"公共"図書館」である所以、行政予算60%民間からの寄付40%というファンドレイジングでの苦悩が終始描かれている。あまりにも多様な機能が求められるがゆえの、図書館として何を優先すべきであるかを中心にした議論の展開。図書館運営の裏側を垣間見るようで興味深かった。

エドムンド・デ・ワールの「創作の過程は省いてはならない。物の作り方が人を定義するのだ」という話。先日読んだ『昭和の店に惹かれる理由』を思い出した。料理に時短が効かないように、図書館づくりでも効率化の道は目指してはいけない道のひとつなのかもしれないと思った。
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