菩薩

人間機械の菩薩のレビュー・感想・評価

人間機械(2016年製作の映画)
4.0
「超絶音響工場労働記録映画」なる看板はかの傑作『鉱 ARAGANE』を前にしたら多少霞むし、特に音響に関しては根っからのインダストリアルっこである俺氏にとっては物足りなさすらあったが、こちらはしっかりと「貧困」に焦点を当てた問題意識の強い作品だった。労働者の一人は「貧困はいじめである」と話す、金持ちには貧乏人の気持ちは分からないが、我々は会社に労働環境の改善を訴え出る余裕すらない、明日の銭が無いからであると。一方彼らを酷使する(見るからに悪徳な)上役はここ何年かで吾輩の収入は驚くべき上昇を見せたと左団扇でしたり顔、同時に貧乏人の奴らに金を持たせたって傲慢になるだけだと自らを正当化する。労働者の一人は自らすすんでここに来たのだから搾取をされているわけでは無いと語るが、世の中はどうしたって未来永劫変わらぬ搾取構造の上に成り立っているものである。ワン・ビン『苦い銭』にも通ずるグローバル経済の闇、厳しすぎる現実(ハードコアとのルビが振ってある)、美しく染色された布地を広げる彼らの衣服は真っ黒に汚れ、彼らが産み出す産業廃棄物は更に貧困に喘ぐ最下層の人間達にとっては宝の山になる。ピラミッドの底辺で上を支える人の気持ちは、上で悠々と胡座をかいている人間達には分からんだろう、目の前に映し出される暗黒に満ちた悍ましくも美しき地獄絵図、機械の隙間から垂れ流される紅い染色液は、労働者達の血の涙に見えた。
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