当初の企画では、監督自身がドーピングをしながらもその事実をバレずに自転車レースで好成績をあげられるかという挑戦だったのに対し、途中から何故かグリゴリーによるロシア政府告発の流れになっていくのが不可解だった。
そもそもどうしてグリゴリーがこの監督の当初の企画に協力的だったのかも不明だし、告発の結果、何の得もなく、むしろ危険に曝されたことに対して、この作品からは労いの言葉や勇気を讃える姿勢も感じられなかった。
アカデミー賞を獲ったということだが、自分はこの作品から制作者の欺瞞しか受け取れなかった。仮にグリゴリーが自らの罪悪感から告白に至ったとしても、製作側からその告白を促すような何らかの誘導があったはず。そこが意図的にかくされているような気がしてならない。