亜硝

キラー・メイズの亜硝のネタバレレビュー・内容・結末

キラー・メイズ(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

たまんねぇっす
ガチで死人出てる?のがどーしても引っかかって仕方ないし、そしてわりと後半の脚本はズタボロ(ホームレスのおっさんどこ行った?)なんだけど、それを差し引いてもめちゃくちゃ良かったです

とりわけ最初の30分が個人的にめちゃくちゃ最高の体験でした ここだけ観たら完璧すぎて文句なしに星5あげたいです
家の中にいきなりでかいダンボールの家があって中から声がするけど中は映されず、じらしにじらされるのでどんどんワクワク感が募るし、満を期して突入したら期待以上の不思議空間が広がっていて、中が見た目より広いことについてなんの説明もないことも含め、ちょっと味わったことのない気分になりました

そして突入直後に壁に触れて血が一滴流れ、段ボールに吸い取られる演出が上手い!この一滴でこの迷路が「ヤバい」ことが予告されて、それ以降ずーっと身構えて観るように誘導されてしまいます。鍵盤の暗闇の中に消えていってキャッキャやってるところすら、血が流れたことを知ってる視聴者には恐ろしい……さらに、肩まで深みのある紙の沼、襲いかかる(?)巨大な折り鶴。いつ惨劇が起こるのか!とずっと緊張しっぱなしでした。結局折り鶴はかわいい生き物だったんですが…… いざ惨劇が起きたら血は全部赤い毛糸。登場人物たちも困惑。この斬新な演出にもわりと度肝をぬかれました……

そこからトリックアートの部屋に入るところまで、ずーっと楽しかったです。ホラーとしても充分機能してるし、それなのにユーモラスで夢のある世界観。たまりませんね。完璧ですよ、最高です。

一旦外に出てからのインタビュー。
「迷路を作ったのは何かを作りたかったから
見る人を引きつける何かを作りたかった」
カッコいい、斬新だとね」
これってまんまこの映画のことなのでは……

30歳になって何も成し遂げられなかった人間がとにかく何かを作りたいという焦り、衝動に取り憑かれるというのはかなり重いテーマだし、物凄く根源的な何かを描いてるような気がする……

でもいかんせん、映画も迷路も、どこか中途半端で未完成なんですよね。後半の操り人形の不気味さとかは素晴らしいんですけど、なんかどんどん間延びしてよくわかんない終わり方をします。ええ?それでいいの……?って感じでした

それでも間違いなく溢れんばかりの初期衝動、ロックンロールを感じる映画で、中々すごかったです。脚本は途中でぶっ壊れてるのにそれでもこんなに良いと思わせてくれるのは、奇跡的に(あるいは意図的に?)作中の「迷路とは何か、物を作るとは何か」というテーマとリンクしていたからなのかもしれないです

自分も何かウワーっと勢いだけでみんなを驚かせるものを作ってみたくなりました 歪でも未完成でも、とにかく作ることが大事、ということなのかもしれない……一番言いたかったことは……

原題は『DAVE MADE A MAZE』。ハウス・ジャック・ビルトといい、もう若くないけど何かを作ろうともがく人の話に妙に自分の姿を重ねてしまうんですよね……
そういう意味でも極めて個人的に、好きです、キラー・メイズ。
亜硝

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