MasaichiYaguchi

ウスケボーイズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ウスケボーイズ(2018年製作の映画)
3.9
実りの秋である。
河合香織さんのノンフィクション「ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち」を渡辺大さん主演で柿崎ゆうじ監督によって映画化された本作を観ると、漫然としていては何事も豊かな実りを迎えることは出来ないことを痛感する。
私が子供の頃に両親が飲んでいた〝国産ワイン〟と称するものは、ただ甘いだけの果実酒だったように思う。
それを現在のフランスワインをはじめとした海外ワインに伍するレベルまで引き上げたのは、本作で描かれた日本ワイン界の巨匠・麻井宇介さんや、その薫陶を受けた「ウスケボーイズ」と呼ばれる若者たち。
その若者たちの道のりは決して平坦ではない。
試行錯誤の手探りでのワイン作り、自然を相手のぶどう栽培だから、手酷いしっぺい返しを食らう時もある。
そんな挫折や葛藤に陥った彼らを励まし、導くのが麻井宇介さんの含蓄のある言葉の数々。
その中で何度も出て来て強い印象を残すのが「教科書を破り捨てなさい」という言葉。
マニュアル通りに無難にやっていけば失敗することはないかもしれないが、それ以上の発展も進歩もなく、いつかジリ貧になってしまうかもしれない。
ワインのフロンティアスピリットを受け継いだ若者たちは助け合い、励まし合いながら夫々自らの道を見出していく。
この作品は「もの作り」をテーマにしたものだが、「ウスケボーイズ」と同様に我々も麻井宇介さんからワイン作りだけでなく、どう生きるべきかということまで教えてもらえたような気がします。