津軽系こけし

ミスミソウの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
3.8
ヒメアノ〜ルの下位互換


我ながらヒメアノ〜ルの下位互換っていう表現は的を射てると思う。
過疎化が進む町の中で錯綜する「一方的」な愛、飛び散る血飛沫と、若手役者陣を軸に、霞む愛の脆さをテーマにしたスプラッターホラー。真剣故にちょっと笑える

ジャンル映画の割に、最初の爆発までのセットアップがちょっと長めだったのが印象的というか珍しかった。こういうジャンル映画でセットアップを大事にしてる映画ってミッドサマーをはじめ、割と高品質な作品に仕上がってる場合が多いんだけど、この映画はセットアップ長めの割にしっかりジャンル映画の系譜に則ってて不思議だった。というか多分、真剣に作ろうとしすぎて、逆にジャンル映画っぽくなってしまったんだと思う、そういうニュアンスが所々から漏れてしまっていたな……というのが全体的な印象。

若手役者陣の演技は雰囲気が出てて、作品との合致性は高かった。問題は台詞、特にいじめっ娘たちのいじめる時の台詞が、安いイジメモノAVみたいでちょっと冷めてしまった。中学生のいじめをファンタジー混じりで描きたかったのは分かるのだけれど、流石に「まじウケるんですけど〜」とか「キモ〜」はこの映画の台詞として安っぽすぎる。
あと主人公の人格が普通の女子高生からアントンシガーぐらいまで変わってしまってたのがちょっと滑稽だった。いじめを受けた故の歪みを描くのであれば、突発的に殺人に手を染めるにしても、いくばくか狂気が爆発する前触れ的な描写が欲しかった。燻ってばかりだったのが、そこまで時間も経過してないのにいきなり大爆発するもんだから驚いてしまった。

しかし、タエちゃんの後悔は、あの年齢のキャラクターだからこそ描ける独特の葛藤だったから、そこはいい意味で印象的だった。ヒメアノ〜ルのせいで漫画原作のスプラッターモノに期待してしまう体になってしまった…、もう少し期待してなかったら面白く見れたかもしれない。残念
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