EDDIE

ミスミソウのEDDIEのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
3.2
イジメは連鎖する。
復讐心に駆られ感情を失くした少女役を山田杏奈が鬼気迫る怪演。確かに凄い!
脇を固める役者たちも皆が無慈悲に徹する。
ただ倫理観を通り越した行為の連続にあまり感情移入はできなかった。
あと卒業式を迎えた生き残りの人物も解せず…。

山田杏奈の怪演を見る意味でも多くの方々にオススメされた作品。
実は山田杏奈主演および中心作品はあまり観ておらず…『哀愁しんでれら』はかなりの端役だったし、『屍人荘の殺人』は観るまで彼女が出ていることすら認識してませんでした。
『樹海村』や『ジオラマボーイ パノラマガール』すら観てません。
10月公開予定の『ひらいて』は芋生悠出演作なので、やっと興味を持つ作品が出てきたというところです。

そんな中で一番自分の琴線に触れそうなサスペンス映画。
山田杏奈の演技を絶賛する声はよく聞くので期待はしてましたが、作品としてはなんとも評価に窮しますね…。

そもそも漫画原作ということもあっての世界観だと思いますが、たとえば『バトルロワイヤル』とは前提が違います。
『バトルロワイヤル』は「今から殺し合いを始めてもらいます」という突然の非日常に放り込まれるという前提がありながら、本作の場合は地方のとある学校の一幕という日常の延長線上の作品である点。

役者たちの演技は山田杏奈を筆頭に、確かに素晴らしいんです。手放しで褒めたいぐらい。
だけど、日常の延長線上を舞台にしながらも、あまりにも非現実的なイジメの描写、倫理観の欠如についていけませんでした。

序盤に山田杏奈演じる野咲春香がボロクソイジメられるシーンがあります。
その後、開始30分弱でとんでもない事態が起こるんですが、いじめてた側の生徒たちは思い悩んだりすることもなく、ただやり口がエスカレートするだけ。
もちろん漫画原作というのもあるんでしょうが、リアリティに欠けすぎて何とも言えない感情に至りました。

何も考えなしに容赦ないスプラッター映画として観ればそれなりに楽しめるかとは思いますが、それであればちょっと演出面でも気になる点があり。
確かにエグいといえばエグいんですが、見せ方がちょっと下手というか…血の飛び方とかもあまりにも変ですし。

極め付けは今回の事件での生き残りと学校側の対応です。
普通に卒業式をやるってところにも感情がついていかなかったし、生き残りの人物はそんなことで和解するんだっていうのと彼女だけを生き残らせる必然性ですよね。
それならばもう少し人物描写を掘り下げ、主人公同様に感情移入できるように仕向けないとモヤモヤが残ります。

まぁとはいえ想像以上の容赦ないスプラッターで、その辺りは映画として楽しむことができました。
除雪車とかはあまりにも度を越していて逆に笑えました。

あと『街の上で』であまりにも可愛らしすぎて注目度の高まった中田青渚が本作ではあまりにも酷いいじめっ子で驚きでした。とはいえ役者としての振り幅は凄いです。

この手の作品を黒沢清とかが撮ったらどうなるんだろうってそっちの興味が湧きました。

※2021年自宅鑑賞125本目
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