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ミスミソウのIKのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
5.0
序盤は凄惨ないじめと対照的に彼女が持つ柔らかく広い優しさと愛と澄んだ美しさが描写されている。けれど進むにつれて彼女がぼんやりとくぐもってきて、何だかよくわからなくなってきて、ピントが加害者に向いてくる。現実との軋轢、単純な感情も全てねじれにねじれて。確かに美しいけれど、これは美しい映画じゃないんだ。何かこうもっと複雑で切実で陰惨で粘着質で届かぬ愛で。

監督がただの友情ではないものを滲ませられる人をと言っていたけれど大谷さんの妙ちゃんはすごかった。君が恋しいんだという目が本当に切実だった。

色もよかった。白と赤。雪と血。平穏と暴力。妙子と春花。白が地で、赤が図なんだ。白を土台として、赤色がのっていく。その構図もよかった。

何より春花(山田杏奈さん)の可憐さが全てだった。復讐劇の中でも私は彼女からあまり渇きが感じられなかった。渇きというある種単純なものに帰結しない魅力が底のない美しさなのかと思った。
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