ラリーの世界で過去の確執や葛藤を持つ兄弟を主軸とし、エージェントの女と若いメカニックの仕事の悩みを絡ませて、自分の殻を破ったり、立ち止まった者たちが状況を打破する成長譚に。
森川葵のラリーの知識がまったくない場違いの役は、作品に対しても同じに。顔がかわいいから許容されるが、前半のスーツ姿でもその言動は全くエージェントに見えない。恋愛模様は何だったのか。
葛藤や悩みの全てを、徐々に会話のセリフで説明してくれる分かりやすいドラマ的な展開なので、あれこれ考えずにドラマとレースに集中できる。レースがタイムアタック形式なので、ドラマ同様にシンプルで分かりやすい構図に。
ラリーの設定が良く、身近な公道を轟音で躍動的に疾走する迫力があり、公道レースで観客が近いので、接近したレースを実際に見ているような臨場感を味わえて楽しい。視覚と聴覚に訴えかける映像は振動まで感じるかのようにも。
其々の成長を経て、情熱的にそして真剣に取り組むからこそ惹かれて引き合うように成長してチームの絆が生まれることは熱いが、散々引っ張った兄弟の葛藤や背負う過去が甘く、弟の無謀な走行を繰り返すドライブの心象には繋がらない。
後半は空気になった森川葵と町田啓太は兎も角、雰囲気はあったが面白みに欠けるライバルの北村匠海の演技力を引き出せない扱いは残念。
メカニックの整備が時間制限があることで切迫感を取り入れることや、終盤の自然による不確定要素やアクシデントに翻弄される模様も上手く、ラリーのチームワークを含む奥深さと熱さが堪能でき、最終レースまでの行方や強引にエモを振りかざす模様も上手く纏めて感心する。
ラストの伏線回収もベタだが、兄弟の絆と同時に童心な男心を取り入れたカタルシスは味わいがある。邦画でカーアクション映画は久方ぶりだが、邦画としてのカーアクションの普及点を余裕で上回り、映画館との相性も良くて純粋に楽しかった。
