アメリカという国がはらんでいるいくつもの矛盾を、ひとつの架空の村のなかで起こる事件に凝縮してえがく傑作。
さまざまな差別、証拠なき復讐、振りかざされる正義など、ここで批評されるものは、アメリカ国内のみならず、アフガン・イラクにたいするアメリカの立場などまで含んだ膨大なもの。
「憎しみの連鎖から人間は解き放たれるのか」という倫理哲学上のアポリアに、理屈ではないところで答えるという離れ業を見せてくれる。
ラストもこれしかないというくらい爽快。
フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェルをはじめとする実力派俳優の名演も見事。