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スリー・ビルボードのKEKEKEのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.0
- 正義の反対はもうひとつの正義、みたいな結論に終始せず、正義を取り巻く複雑な事情と関係性を掘り下げることで、延焼する怒りの渦を俯瞰で表現した
- 小さな町の輪郭が、境界線ではなく怒りで可視化されていくのが面白かった

- 古今東西起きる数々の闘争は、マクロな視点では二項対立で、さながら白黒どちらかを決めるオセロゲームに見えることが多いが、実際のところそれらは何らかの目を取り巻いて拡大するカオスで、同じ勢力がひとつの目的で連帯しているとは限らないんだろう
- 何万人が死ぬ戦争でさえも、怒りと怒りの報復による連鎖で日々新たな薪が焚べられ、火元なんてとっくに見失ったまま死屍累々が積み上がっていく

- ヘイズは犯人から警察、署長へと、責任の所在をスライドし、世論を煽って炎上させることで事件解決のきっかけにしようとした
- 広告は当初あくまでも犯人を捕まえる手段だったのだが、同じ方向を向いているだけの人間ら(警察官に恨みを持つもの、ここではその多くがマイノリティ)と、当然それに対抗する勢力を巻き込むことになり、結果さらに多くの怒りを生む結果となる
- ビルボードは対立構造をシンプルにしてしまう
- それがビルボードの持つ力であり、怒りの持つ感染力である

- ヘイズの大義は作中徹頭徹尾変わらないが、見てるこっちは途中からこれが何の闘いだったのか、誰が正しいのか足元をグラグラ揺さぶられる
- 明確なカタルシスがないので、どれだけダイナミックな映像が続いても全体的にモニョってして終わる、それが良かった

- でも人種差別的で馬鹿な白人警官が痛い目に遭って心を入れ替える、みたいなのってまだいりますか?いるのかな、いるのか
- 今作に限ってはそいつがゲイで、それは署長の報復の強い動機になっていて、物語に絡む重要な要素だからOK?
- この類型の語り直しって現実にある権力の暴走みたいな問題の解決に寄与しているんだろうか
- すでにある分断を深めているだけな気もするけど
- あと作中に多くのマイノリティを登場させているけど、構造としては結局白人同士の諍いの薪として焚べられているだけで、それが現実だとしても、もう少し先の話をして欲しいと思ってしまった
- 彼らがお互いを見下しあってるみたいな構造のはなしも、その先に繋がる物語が見えなくて、マイノリティがその役を演じさせられているように見えた
- 主人公が当たり前に差別的なのも南部の構造の話をしているからなんですかね
- あくまでも過去から連綿と続く世界の構造を、現在の視点で捉え直した作品であると、そう解釈していいのか果たして

- それにしてもサムロックウェルってマジで老けないすね、グリーンマイルから20年経ってるとは思えない(今作も2.30代の役?)
- 長男どっかで見た顔だなーってもやもやしてたけど、mid90sの長男か、長男が似合う男やね
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