豊島区民

スリー・ビルボードの豊島区民のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.1
3枚の看板が立つことから生み出される群像劇…と纏めてしまうことは簡単だが、とても複雑な構造を持った作品。
アメリカ南部の田舎町という設定を背景に、生まれや人種、性別など様々に異なるバックボーンを持った登場人物達によって織り成される、容易に想像出来ないストーリー展開にとても惹きつけられる。静かだが力強さに満ち溢れた人間ドラマ。
登場人物達は各々の思想信条や理念に基づき行動しているが、時として理知的に、時として衝動的に動いていく。その有様に、ある時は好意的に感じ、ある時は悪意を感じ、観る者は様々な感情を惹起させられる。まさに人間が持つ多面性、多様性をまざまざと見せ付けられていく。人間はその時々の表情によって全く違った一面を垣間見せることがある、そのことを実感させられる俳優陣の演技が素晴らしい。
また、何が正しいのか、何が間違っているのか、一つの出来事に対しても、それを見る人間によって見方は様々に異なる。そうした物の見方を、淡々と、しかしドラマチックに描いていく様は見事だと思う。
人生において、何が幸せで、何が不幸なのか、色々と自分に置き換えて考えてみると、非常に重たい意味を持つ結末だし、苦難に立った時の人間の救いとは一体何か?考えさせられる作品。
豊島区民

豊島区民