おこめ

スリー・ビルボードのおこめのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.7
「面白い」とか「良かった」みたいな感想は全く出て来ず、とにかく、物凄い作品に出会ってしまった、と思うばかり。
実際、安易に面白いと言えるような作品ではないし、良い作品かと聞かれたらそれは私には判断できない。ただ、問いかけてくるものは確実にある。
良いとか悪いとかそういう次元を超えて心に一生刻まれる、想像を遥かに超える問題作で圧倒的な大傑作。これを素晴らしいと言わずして何を賞賛するのか。

憎しみ、愛、偏見、悲哀、怒り、そして許しと、それぞれがそれぞれの形で表していく感情があまりにも不器用で直接的で、時に狂気じみている。しかし、感情に任せた行動でありながらも、悩み葛藤している姿も垣間見える。これを演じきる俳優陣には天晴れとしか言いようがない。

後半に進むにつれ、レッドのオレンジジュースとか、ディクソンのシャツとか、赤に染まっていたものが鮮やかなオレンジに変化していく様子は、小さく些細な変化ながらも胸が締め付けられる。
オレンジジュースのくだりなんかは、この作品唯一の直接的な優しさであり、許しだった。きっと観た人誰もが何とも言えない気持ちになったであろう瞬間、改めて凄い脚本であり、演出だと感じました。

余談だけど、ケイレブランドリージョーンズ君、ハマり役だったな…
見方によって大人しそうにも狂気的にも見える顔と表情と表現力を持った役者さん、とても貴重だなと改めて感じさせられた。役柄も相まって凄く凄く素敵だった。
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