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スリー・ビルボードのERIのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.9
こんなにも言葉にできない感情で泣かされると思わなかった。ミルドレッドにも、署長にも、ディクソンにも、広告会社のレッドにも泣かされてばかりだ。

第90回アカデミー賞の最優秀主演女優賞のスピーチでフランシス・マクドーマンドの佇まいや話す言葉全部がかっこよすぎて、この映画は絶対にみようと思っていました。公開していたときはなんだかタイミングを掴めないでいたんだよな。ようやく、になってしまったけれど。


彼女は、アンジェラ・ヘイズの母親ミルドレッド。人通りの少ない道にあるビルボード。ここを管理している会社に行って1ヶ月を借りる。虫が裏返って動けなくなっているところを、ミルドレッドが指でそっと返してやる。虫は前に進む。物語を方向づけるようないい描写だ。

赤い背景に、3つのメッセージ。これは、大切な娘を失った母親の闘いだ。このメッセージを受け取ったウィロビー署長や警察署は怒り心頭だったけど、主張を変えないミラドレッドに向き合わざるを得なかった。

広告を燃やされて、それを家の消火器で必死に消そうとするミルドレッドに涙が止まらない。わかってるんだよね、こんなことしても娘が戻らないことは。

悲しみは悲しみを生んで、どんどんよくない方へ転がっていくけど、人の優しさが紛れ込んでくる。未納になりそうになった広告費を出しちゃう署長も、2階から投げられたのに怖いのに結局オレンジジュースにストローをさして渡してあげる広告マンも、罪を隠すために僕と一緒にいたという小柄な男性も優しいんだよ。とても優しい。


悲しみや怒りは、どこにどうしたらいいの。
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