本当に伝えるべきことを、恥ずかしげもなく訴えかけてくる超王道ヒーローもの。
トレバーの言葉で泣いた。
まさに1980年代が帰ってきた映画で牧歌的だった時代の罪と本質を問いただしてくる。まだ夢を信じられた時代、無邪気に夢を追うことで搾取と崩壊が進む直前。
あの時代とは何だったのかを考察する作品となっていて始めは何故この時代を選んだのか解せなかったが、やがてトランプみたいなこと言う悪役が出てきて納得。夢が反転した時に何が起こるのか、が描かれている。
これは、ここ数年ハリウッドで流行ってるパワー・オブ・アメリカへの反省と贖罪がテーマだから。正面切ってあの時代を批評することで、世界が何を失って、何が残っているのか、みんなで考える映画になっている。
夢、理想、権力、暴力、全てがコインの裏表のように密接に絡んでいる。誰もが願いを叶えたら何が待ち受けているのか。あのダイアナですら、望みを捨てることができない。
そんな中、トレバーだけが正しい道を示す。第1作目の時と同じように、本当に正しいことのために自らを犠牲にする精神。
トレバーが示した道をダイアナが歩き、世界も歩もうとする。悪役ですら、その道を追う。
何という楽観主義。溜め息が出るほど甘っちょろい。だけど涙が溢れる。突っ込みどころ満載の脚本、80年代風の大袈裟な演技、冗長な編集、ご都合主義爆発。欠点はいっぱいあるのに、それ以上に正しいことを伝えなければならないという強い信念を感じる。それこそが80sスピリットだ。
トランプへの憎しみで作ったのかと思っていたが、そうではなかった。封建的な父性の犠牲となってパワーを追い求めてしまい自分を傷つけてきた魂全てに愛を与える物語だった。
まさに女性にしか表現できない優しく母性に溢れた希望。愛が世界を救うと本気で説いた快作。
80年代は、そんな希望を本気で信じてた。もう1度、信じてみても良いかもしれない。
愛すべき大好きな作品なりました。