ゆりぽん

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのゆりぽんのレビュー・感想・評価

3.0
ダニエル・クレイグが6代目ボンドに選ばれ、大ブーイングの最中公開された一作目が大ヒットを飛ばしたことで、007は完全に概念になった。と勝手に思っている。

米ロ冷戦時代から大きく変化した世界秩序と、時代に合わせて変化する諜報活動を描きつつ、旧き良き時代遅れの英国紳士の最期にどのような舞台を設けるのか。今作で監督のキャリー・フクナガは、自分の色も加えつつ、これまでの作品でどでかく広げた風呂敷をなかなか強引に、しかしなんとか綺麗にまとめていて、まずその手腕がゴイスーである。

ボンドの描き方も、前作ではわざとらしい程ボンドの衰えを描写してて悲しかったのだが、今作は年相応で普通にイケオジボンドとして撮っていて、この時点で★3だった。サービスカットあざっす。中盤の新人との絡みのシーンなんか、完全に男として見られておらず痛快であった。何時までも若い子に相手にされていると勘違いしてるオジサンあるある。
最期の美味しい見せ場も、ほろ苦要素と脳筋のスパイス加減が完璧で、見事なダニエルクレイグ007卒業式を目撃した感があった。卒業証書受け取りやがれドッカーンみたいな。
チートすぎるポイズン(俺の考えた最高の毒薬感)や、時々出てくる日本要素がなかなかチープに見えてしまい、そんな安っぽさも007シリーズらしくて好き。(褒めてる)

とはいえ、ボンドの今回の結末というか、最後の彼の取った行動の表現が個人的にモヤッとポイントであった。最初から最後まで予想通りで、もう少し心に刺さるなにかが欲しかったというか…
あのウイルスはニアリーイコール殺しのライセンスであって、決して幸せな未来が訪れないことはボンドの宿命である。そのセオリーに則った結末であるなら最後、死を受け入れ諦めて、満足気にさえ映った描写は綺麗すぎて何とももにょる。
世界を救うヒーロー映画だといえばそれで終わりなのだけど、結局彼はボンドとして死んだのか、一人の男として死ねたのか。死に場所を探している映画なので、結論最高に格好良くてド派手な終わり方なのだけど、もうちょっとかっこ悪くあがいて悔やんで死んでほしかったと願ってしまう。個人的に。

しかしこのシリーズほど分かりやすいプロパガンダ映画もそうないよね
ゆりぽん

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