シネマスカイウォーカー

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのシネマスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

4.3
007/ジェームズ・ボンドシリーズ第25作目。

シリーズ史上初のリブート的に始まったダニエル版007シリーズの最終章。
作品同士の繋がりを強く意識し、リアリティかつ現代版にアップデートし、今や最も人気なボンドとなった本シリーズの結末が遂に描かれる。
本作では『007 カジノ・ロワイヤル』と『007 慰めの報酬』のように『007 スペクター』の直接的な続編となっている。特にマドレーヌの過去が掘り下げられスペクターとサフィンとの関係が掘り下げられる。

何度も引退を望んだボンドは何を背負って戦うのか、ボンドの最後のミッションは涙無しでは見られない。


配給がユニバーサルだからこそ出来たガンバレルシーンはなかなか良かった。前作『007 スペクター』で言及されていたシーンがそのまま描かれた後、時代は現代に。アストンマーチンでのアクションシーンからのマドレーヌからの別れからの....
Billie Eilishの「No Time to Die」は最高の流れ過ぎる。しかもオープニング映像がまさかの『007 ドクターノオ』のオマージュシーンになっていてテンション爆上がり。ラミ・マレックの演じる役がドクターノオと騒がれていたのは逆手にとったのではと思わせるズルい演出だった。サフィンをドクターノオとしても良かったのでは?と思ってしまう。

他にもショーン・コネリー版を思わせる南国のシーンなどあり過去シリーズ愛が感じられてとても好感が持てた。
スペクター幹部をあっさり退場させてしまったのが残念だったとはいえ、アナ・デ・アルマスの最高のアクションシーンが見れるのですぐに忘れられる。ボンドがCIA側につくのも斬新だった。そしてそのCIAの友人であるフィリックスの死。
完全にキレたボンドは復帰しMI6に戻ってくるシーンでは『女王陛下の007』のテーマ曲が流れる。

ラストの日本の沖合いにある島での死闘は『007は二度死ぬ』を彷彿とさせるものがある。長回しの銃撃戦は本当に手に汗握る。二度死ぬではなくNo Time to Die死んでる場合じゃないでもなく、愛するもののために死んでいくジェームズ・ボンドのラストは涙無しでは見られない。

散々な言われ方をしてきたダニエル・クレイグのボンド、ブロンドに青い瞳はボンドではないと言われ続けたシリーズだが最後にその「青い瞳」を活かした最高の演出があったのは本当に上手いと思う。

愛する妻と娘のために死んでいくボンド、本作で”2人の”ボンドガールに愛され死にゆく結末。そしてアストンマーチンに乗ったマドレーヌが娘に語る「彼の名はボンド、ジェームズ・ボンド」からのエンドロール。流れるのはルイ・アームストロングの「WE HAVE ALL THE TIME IN THE WORLD」。これはマドレーヌとボンドの最後の会話で「もっと時間が欲しいわ」とマドレーヌの言葉に対してのボンドの返答である。死んでる時間はない、私たちに時間はいくらでもある。全ては愛を越えて語り継がれる007の物語。これはボンドの初の結婚が描かれると同時にボンドが愛する妻を亡くす悲しい結末を迎える『女王陛下の007』で使われている曲であるのが本当に粋な演出だ。ボンドが妻を亡くすと対を成すようにボンドが命を落とす映画でこの曲でしめる。

とにかく演出が最高すぎる1作だった。
エンドロールの最後にお約束の「James Bond Will Return.」が入るのもボンド映画らしい。

7代目ジェームズ・ボンドの映画はあと10年は寝かせるとして、パロマとノーミのスピンオフ作品は是非とも作って欲しい。時代の流れとしてもちょうどいいのでは?

※配信等ではユニバーサルのロゴは無くこの演出は劇場公開版のみのものらしい