りえりーぶる

泳ぎすぎた夜のりえりーぶるのレビュー・感想・評価

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)
3.5
五十嵐耕平作品は観たことなく、ダミアン・マニヴェル作品は「若き詩人」と「ル・パーク」を鑑賞済み。

演技指導ができない素人の子供ひとりにほぼすべてを無言で語らせるのは主演のタカラくん、五十嵐、マニヴェル両監督にも荷が重すぎたのではないのでしょうか?

昭和な日本の木造住宅の階段やドアの幅のイメージにあった画面サイズ、水墨画のような雪景色や、雪が突然、落ちてきてはっとする場面、犬のリアクションや全体を流れる色の美しさなど特筆すべき点も多くありましたが、この映画を誰が観て、誰をも、ほんとうに満足させるには、ソール・ライターの写真のレベルを動画で再現させるくらいの必要性があったように思います。

カメラは何台くらい使っていたんでしょうか。もっと違うアングルからのショットもあれば、もっと情感にあふれていたのでは。

音楽も、たぶん、スタッフの人がピアノを弾いていたんではないかと思うけれど、ちょっと稚拙さが耳につきました。タカラくんが車で眠っているシーンで、運転席についた男性がかける音楽が、クラシックというのもかなり唐突に感じました。ラジオをつけて、その番組がたまたまクラシックでという流れならわかるのですが。

個人的には、もっと日本的な曲で、例えばクラシックに造詣が深いくるりの岸田繁氏か、イメージが変わるけれど、ある意味、日本を感じさせて繊細なコーネリアスなんかがよかったのではないかと感じるところです。予算もあって難しいのかもしれないけれど。

昨年、期待せずに観た「若き詩人」が予想外におもしろかったのと、カイエ・ド・シネマ週間での「ル・パーク」上映の際のダミアン・マニヴェル監督のフランス人映画作家らしからぬ素直な感じに感銘を受けたので、五十嵐、マニヴェル両監督の次回作に期待したいところです。
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