泳ぎすぎた夜の作品情報・感想・評価

「泳ぎすぎた夜」に投稿された感想・評価

eye

eyeの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『人間ももともとはけものと同じ生きものだった。
言葉がないと、意味の仮面がはがれて、いのちのナマの姿が見えてくる。』谷川俊太郎/詩人

この言葉に集約される映画。

第74回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門正式出品。ここFilmarksでも受賞。

しんしんと雪が降り積もる青森は弘前が舞台となる日仏合作映画で、小さな町の漁業市場で働く父親を持つ小学生の男の子の物語。

実際の家族が演者であり、ドキュメンタリー要素とフィクション要素が混ぜ合わさった映画。

父は仕事に行く前に家族を起こさないように静かに支度をし、タバコを吸うことを日課にしている。
ある日少年は物音で目を覚まし、父親が出かけるのを目の当たりにする。

父親が座っていた場所にちょこんと座るその姿がどことなく重なって見える。

その夜は眠りにつけず、魚の絵を描いたり、写真を撮ったり、テレビを見て過ごす。なので朝は当然ボーッとしている。

普通に登校するはずの1日が、父親に会いに街に繰り出す日へと変わり、記憶を頼りに、片方の手袋を落としながらも歩みを進める。

とても原始的な映画でセリフはないに近い。

"絵"・"魚市場"・"長い眠り"といくつかセクションに分かれてはいるが、旅を続けつつ、最終章は長い眠りにつき、少年は眼を覚ますことはない。

それまでの旅が長い夢を見ているように。

普通に考えれば極寒の中を身一つで、動き回ることは危険以外ないし、「家族ももっと心配しろ!」って話につながるけど…

それよりも少年が魚の絵を見せに父親に会いに行く!っていう目的に突き動かされるその姿は衝動感がある。

帰ってきた息子を言葉なく、優しくそっと見守る父親の姿は家族を守る者としての偉大さを感じさせる。

自分が幼かった頃、大きな父親の姿を重ねて、昔のことをそっと思い出させてくれるような映画。

弘前水産地方卸売市場にそっと置いてあるニット帽が戻ってくるといいね。
三宅唱や五十嵐耕平といった映画作家が音楽家たち(もちろん、 butaji とか)と交流があり、彼らのビデオを撮っているというのは興味深いし、健康的な状況であるような気がする。何かもっとこう、それがスパークするようなことが起きればとも、勝手に期待している。

極めてコンセプチュアルだった『息を殺して』とは対照的に、五十嵐と『若き詩人』のダミアン・マニヴェルによるこの『泳ぎすぎた夜』は、かなり削ぎ落とされた、最小限の要素でのみ構成されている。そもそも前作からしてセリフは少なく、淡々と静かに、映像によって物語る映画ではあった。が、『泳ぎすぎた夜』では、セリフが一切ない。それがうまくはたらいているかというと、少し微妙なところではあるものの……。

少年の、動物的な動きはかなりおもしろく、目が離せない。ユーモアもある。映像そのものは気持ちよく乾いてはいるが、どこかナイーヴさも感じる。スタンダードサイズで、なおかつ徹底的にフィックスで撮るのだという気合いは感じる。しかし、シンメトリーを意識しすぎた構図に退屈さを覚えないわけでもない。そして、致命的なところは、ピアノによる音楽が凡庸であることだ。

優しく、柔らかく、それなりに野心的な映画ではあるが、結局何を見せたかったのだろうかと考えさせられてしまった。ドラマがない(わけでもない)。それは保守的なドラマのあり方に抗う方法だ。だからこそ、そうしたドラマの意義を見せつけてほしかった。

五十嵐の次の作品には期待したい。
yukke

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4.5
台詞らしい台詞が無いからこそ際立つ、少年の仕草、表情、行動のひとつひとつ。毎秒毎秒、映るもの全てが饒舌に語りかけてくる。素直に感動した。
negi

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4.0
ジャケットに惹かれて借りたけど大当たりだった。
お父さんに会いに旅に出た男の子が、愛おしくて愛おしくて、無音なのに79分見入ってしまった。
弘前の雪景色も素敵だった。一度訪ねてみたい。
ヴィバルディの朝も最高。
ichikonegi

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3.3
早朝の真っ暗な魚市場に静かにヴィバルディの春が流れ始めた時点で心奪われた。冬の早朝って起きるの辛い反面、妙な高揚感があるから個人的にはワクワクするオープニング。

一面の雪景色と広い空、家具や町のポップな色、子どもは見てて飽きない。
ドキュメンタリーのような印象に弘前の銀世界と少々の違和感が加えられて、程よいスケールのファンタジーに仕上がってる。

ただセリフがないので映画館で観たら寝ちゃうかも。最後暗いままなのも。
年始に一人でPCで観たのが功を奏した。
silence

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3.0
子どもなりに考えて行動し成長していく。自分の幼少期を懐かしみながら観た。
Kaori

Kaoriの感想・評価

3.0
わたしには難しい。
ずっと無音で寝てしまった。
子どもの自然な感じはすごいよかった。
手袋片方なくてさむそうだった!
一人で背伸びして遠出を目論むあの頃を思い出してどっか恋しくなる、時折退屈に感じてしまうけど何かが失われたせいだ この足でこんなところまで遠出してきちゃったんだなー

手の中の雪はいずれ溶けてなくなるが、冷たいという感覚だけがいつまでも残っているように、記憶は頭の片隅に小さく残っているのだ

2019年1本目
横断歩道を渡るショットや駅の看板から雪が落ちて驚くショットなどの偶然の産物に魅力を感じたが、それ以外のショット群に疲れた。

記憶を呼び覚まされる感覚を覚えただけに、やや残念。
新年一本目。おそらく五十嵐耕平は無自覚のうちにロージーと心を同じくしていて、すなわち犬が極めて記号的な描写でシーンの橋渡し役に設定されている。
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