泳ぎすぎた夜の作品情報・感想・評価

「泳ぎすぎた夜」に投稿された感想・評価

海

海の感想・評価

4.9
雪は鳴る。愛情はそれだけで鳴る。冬には音階があり、たからくんの世界にはつかまえた先から逃げていくほどたくさんの音があそんでいる。知っていたはずの事。忘れるはずもない冬の日の温かさの事。眠っているあいだの事なんて知っているはずもないのに、どうして髪を撫でる手のひらに、夜に溶けていくまなざしに、こんなにも涙がこぼれそうになるのだろう。色んなことを思い出し、そしてたからくんという一人の少年に、色んなことを教えてもらったのだった。

たからくんの存在は、私たちにとっての雪、真っ白な景色の間に高く高く立つ大きな木、雪の下の冷凍室で凍った蜜柑、誰もが寝静まる早朝の海と陽のあのあいだの空気。青い海から真っ白な朝にとびだして、ぎゅむぎゅむと雪を踏みしめる一匹の青い魚。
たからくんは一つずつ、色んなものをなくしていく。そして一つずつ元の場所に帰っていく。あさがくるまえに、きみが起きてしまうまえに、きみの大切な宝物の夢が覚めてしまうまえに、すいすいと夜を泳いでいく。魚の絵はきちんと父のもとへ。青いぽんぽん帽子もきちんとたからくんのもとへ帰るだろう。最後は、最初の、手袋の番だね。たからくん、どこまで行った夜もきみはやっぱり昨夜と同じ毛布の中で眠りにつく、この真っ白な雪の下、時に言葉よりも確かな静寂の中、きっとすべてが正しい場所に帰っていくよ。世界中から祝福を受けるような雪の日は、淋しいほどに胸の中ばかりがいっぱいになる。海のようにいっぱいになる。

小さな小指に大きな絆創膏。夜明けの前に響く車のエンジンの音。海中をくるくる泳ぐ目とゆらゆらたゆたう寝癖。たからもののような、たからくん。ずっとずっと泳いでいけるほどいっぱいに満ち満ちた夜の事、一粒の淋しさ、いとしさはまた一晩のうちに、静かに音を立てて降り積もる。


劇場を出た後、世界はいままでより少し違って見えた。会いたい人に会いにいきたい。泳ぎすぎて、疲れて眠るその夜に、ここに帰ってくる約束が、私たちにはあるのだから。

2018/10/6

台風の予報の日、避難勧告も出てたのに、空は晴れて鳥は鳴いていてとても心地のいい日だった。この映画みたいに、世界中に愛されて、もうなんだか淋しい気さえしてくるような、そんな美しい日だった。

想像の域を出ない感じ。

やりたいことはわかるし、おっ!としたショットもあるし、思いのほか締まってたけど、トレイラーの想像の域を超えない。

とはいえ寝てしまったなぁ〜!

そういえばマニヴェルの犬を連れた女は面白かったなぁ!というようなことを皮肉にも思い出した。
ro

roの感想・評価

3.8
映像が絵みたいできれい。あと犬がめちゃくちゃかわいい。子供もめちゃくちゃ自然でかわいい。
nono

nonoの感想・評価

3.8
魔法や夢のようなラブストーリーや凄技アクション、どれももちろん魅力的なんだけど、なんでもない人間を人生を生活を映画にしてしまう映画がわたしは好きだ。まさしくそれがこの作品で、五十嵐監督の作品をどうしても観てみたかったので本当にうれしい、息を殺して も絶対にみたいなぁ
北海道の雪景色がうつくしいのはもちろんなんだけど、男の子の鼻水がカピカピに固まった無垢な鼻はもっとうつくしい
わたしが一番印象に残っているカットは、男の子が乗り込んでしまった車のおにいさんが男の子を家まで送りに来たとき、ふと玄関の前で空を振り返った瞬間のあの幻想的な空と景色です、あのカットだけでもいいのでもう一度見たい
いみ

いみの感想・評価

2.8

このレビューはネタバレを含みます

予告が終わって本編始まるときに銀幕の幕が狭まった作品は初めてかも。

なにも起きない映画です。
想像はしてたけど想像以上にシンプルな作りの映画でした。
セリフゼロです。
でも
音が良かった。
食べたら歯磨きして寝なよーと心のなかで突っ込みつつ(笑)ポテチの咀嚼音!
雪を踏みしめる音
呼吸音に寝息の音…
シンプルだから集中して音を楽しめました。

男の子がひとりでお父さんに会いに行くってだけのシンプルな作りだけど
人生もこんな風にシンプルに考えればいいんだなということを感じさせられました。
生きていって死に向かうという。
そう考えると深いのかなぁと思いました。

主演の男の子は可愛いし「小さな冒険」という宣伝コメントに何も偽りはないけど…
でもやはり何か起きてくれることを祈ってしまった…
つまり退屈な映画でもありました。

ちなみにどうでもいいことですが
後半の車内でクラシックが流れたけどあれはラジオか演歌でしょうに、おしゃれに走ったなと残念(本当にどうでもいい好みの問題ですが)。
手袋の行方をかんがえて、みつめ続けていたら終わっていた。好きです。
zer0ne0

zer0ne0の感想・評価

5.0
五十嵐耕平監督の作品がもつ多様さのセンスが好きだ(ダミアン監督はベストマッチなのだろう)。
本作は作り手のスタンスの素晴らしさに加え、何よりも鳳羅くんの存在が素晴らしい。
どんな俳優にも真似できないと思わせる生の表現であり、演技とは反応なのだ、という事実を見せつけられた。
演出を押し付けるのでなく、あるものをねじ曲げるのでなく、受容し取り入れる監督達の手によって、スクリーンに生きた時間、奇跡的な時間がながれていた(音の使い方や配慮、照明など素晴らしい)。
その嘘のない生さがスクリーンを越えて現在とリンクし没入感を生み、館内が白い世界となり、あの頃が今となる。
まるで自分が冒険しているかのような感覚、ノスタルジックな体験。
少年の思いつき、孤独、旅、抵抗、想いが心をゆさぶる。
(『息を殺して』でもスクリーンという「境界」を越えて異次元へと誘う体験があった)

しかし本作は、難解で複雑な構造をもった作品ではなく、かといってミニマルで洗練されたアート作品でもない。
ありふれた採点、つまらない批判等は不可能というかこの作品には不粋だ。
むしろ言葉はいらない。
ただ奇跡的な時間だった。
彼が世界を飄々と泳いだ時間が頭に残り離れない。
この映画を観れてよかった。

このレビューはネタバレを含みます

子供の力強さや太々しくも目が離せない不思議な魅力が伝わってくる、静かで豊かな映画だった。

アフタートークで印象に残ったこと
「帰ってきてお母さんに抱きつく、とか、そういうのはもう見た」
「想定できることなんて大したことない。」
新しい表現に挑戦したり、想定外のことも取り入れて進めたり、とても若々しい
QTaka

QTakaの感想・評価

4.5
映画に求めるものってなんだろう?
それは、「映画だから出来る表現との出会い」ってことはないだろうか。
そんな事を考えさせられる一本でした。
唯一無二の一本ですね。
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小学校1年生の男の子の冒険を撮った映画だね。
有る意味、「はじめての…」的な気もしないでもない。
なんて、思いながら見始めたけど、ちょっと違う、いや、全然違う。
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主人公は、たから君、小学校1年生。
雪の降る、冬の弘前郊外が舞台。
冬の一日、早朝、まだくらい時間から夜まで、丸々一日ね。
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前編通じてほとんどBGM無し。
ちょっとピアノの音が入るくらい。
セリフは無い。
だれもしゃべらない。
強いて言うなら、「うぅ〜、ワン。ワン。」
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静かに、でも、至近距離で撮られているので、とても身近に見える映像が、いつの間にか少年と寄り添うような距離感で流れて行く。
だから、少年の仕草、行動が、本当に自然であることに驚く。
というか、自然で当然なのだけども。
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朝早くから魚市場へ仕事に行くおとうさん。
その姿を、夜明け前に見送って、眠れなくなった少年は、おとうさんに会いに行くことに決めた。
そこから大冒険が始まるのだけれど。
そこからどうなるかなんて実はどうでも良くって、
「そこからの顛末をこの少年はどう演じるのだろう?」ってことが一番のポイント。
でも、そこは全くの杞憂でしかなくって、彼は、実に堂々と演じきってしまっている。
そこは、大人たちの色々な努力も有ってのことだろうけどね。
でも、セリフ無しで、雪原をひたすら歩き、電車に乗り、街をさ迷い。
その途中途中で、居眠りもし。
この自由すぎる姿は、本当に人を魅了する。
この子は、凄いのかもしれない。
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キャストは、ほぼ少年の実の家族。
そのへんも、少年の自由な仕草や表現に繋がっているのだろうね。
そういえば、犬の「はな」も優しそうなワンコだったな。
そういう家族なんだね。
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ラストシーン、お父さんが夜遅く帰ってくる。
(お父さん、魚市場の他に、除雪の仕事もしているみたい。)
結局、少年は、丸一日、お父さんに会えなかったね。
お父さん、ちょっとだけ少年の横で一緒に寝てあげる。
少年は、ぐっすり寝ちゃってて、気付くはずも無く。
今日は、いっぱい歩いちゃったからね。
(いっぱい泳いだからね。)
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とても不思議な気持ちになった映画でした。
静かな映画っていいですね。
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ちょっと気になったこと。
少年の描いた絵について。
少年は、お父さんの仕事場の事を思いながら色鉛筆で絵を描きました。
魚と、タコと、亀?
魚市場に、亀?いませんよね〜
「これは、とても小さな、新しい冒険の始まり」っていうコピーに嘘はないけれど、親目線で観てしまったので、少年が帰宅した後の、TVを見る母と姉の表情とか、少年の眠る部屋の前で暗がりに佇む父とか、一回諦めた人たちの安堵にも見え、なんか怖かった。
子供らしいけど、多分子供はもっとすぐに音を上げるかな?、とも思った。どこかにもう少しフィクション強めなエピソードがあったら、素直に受け入れられたかもしれない。
やっぱり母は死ぬほど心配したはずよ。現代ならば…。
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