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友罪のYuのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
3.5

隣で静かに微笑む友が、かつて日本中を震撼させた“あの事件”の少年Aだったら…。その問いに答えはあるのか
という公式HPにあるイントロ。
“友人が過去に重大犯罪を犯していても、あなたは友達でいられるか”
原作小説の帯に書かれたキャッチコピーに連動するものであるが、瀬々監督が自ら脚本を作り目指したものは、少し違ったものに思えてしまった。

この作品に出てくる主要人物は、みな心に罪を抱えている。それは決して消えることのない、深く鋭く刻まれた傷。

誰かに赦しを懇願しても
自分の身体を傷つけても
孤独に自分の殻に閉じこもろうと
決して許してもらえず
命を絶つこともできず
傷つける者から逃れられない

“生きたいんだよ!”
瑛太の叫びが、胸に突き刺さる。

生きる喜びは、あらゆる人間に平等に備わった普遍的な欲求だ。

瑛太の、生田の、夏帆の、佐藤浩市の、富田の彼ら彼女らの幸せは、とても狭く限定された所ではあるが、確かに、瞬間瞬間で存在していた。

冒頭に記した問いの答えは、言葉の暴力を持つ者からの着信きっかけで、2本の指を失った“事故”に象徴される。無責任な者に気を削がれ、再び同じ過ちを犯した彼は、大切にしなければいけない友達を2人とも失ってしまうのだろうか。
2本の指は再生した。そこに1つの答えがあるような気がする。物理的なものと精神的なものは、違うんだなんて思いたくもない。

ただやはり、瀬々監督はその問いと答え以上のものを、今作で描きたかったのではないかと思えてしまう。
風呂敷を広げすぎて、収集つかなくなった感の否めない脚本が、実に勿体ないと思ってしまうほど、演者たちの魂の叫びが十二分に込められた作品であった。
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