芦塚あきひろ

友罪の芦塚あきひろのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
3.1
瀬々敬久監督の出世作『ベヴンズ・ストーリー』と、同じようなテーマというか。
ベヴンズ〜は、被害者側の視点も入れて、5時間に迫る大作だった。

見終わって、色々考える。割と真剣に考えを促されるという意味で、いい映画だと思う。

ただ、主人公たちに描写が傾き過ぎている感じはある。良くないアンバランスさがある。

被害者遺族である夫妻のもとに会いに行く場面の、突き放した描写などが気になる。ただの相容れない存在って雰囲気で描いていたが、それでいいのか。

三角絞めさんが書いている通り、具体的に何が、どのような悲劇があったのか、そこに嫌な想像力を働かせる描写が必要なのではないかと思う。
三角絞めさんの『友罪』ネタバレのブログはこちら。三角絞めさんのブログは非常に楽しいし詳しいし的確だし赤裸々なので、ぜひ読んでみて下さい。
https://ameblo.jp/kamiyamaz/entry-12385245431.html

この映画だけなら、可哀そうな加害者が悩み苦しむ様を近い位置で見せられて、どうにも視野が狭く感じられる。

報道などで目にする大抵の事件では、加害者も被害者も他者だ。社会が、つまり我々が、彼らをどう遇するのか、そこに正面から向き合う視点が、この映画には不十分なのではないかと思う。感情描写が過多に感じ、こちらは冷めてしまった。

他に思い出した作品は吉田大八監督の『羊の木』だ。距離感が冷静な映画だった気がする。ちゃんと感動するし、ドキドキもするし、困惑もする。圧倒的に不条理でもある。犯罪者とも共存するしかない我々が主役の映画だった。だから我々が事件を、その後を見て感じる感覚が追体験できる。

加害者の苦悩に寄り添うならば、苦悩の根源に迫らないと、理解困難なものを見せられて困惑するし、リアルに感じられない。瑛太はかなり頑張って演じていたと思うが、奇矯な人物、欠落した人物と見えてしまい、どうにももったいなく感じる。

そしてこの映画で、神戸の事件の少年Aを連想しないことは困難だが、監督としては無関係ということらしい。納得できない。
Aのような元犯罪加害者と、彼の事件そのものと、社会に出た後の行動を、我々はどう見るのか。どう向き合うのか。
この映画からはただ作り手の感情の昂ぶりと没入を見せられているような気になった。
エモーションが爆発するところから一歩引いたところから見せないと、実は見てるこっちが感情を揺さぶられないということは、よくある。
芦塚あきひろ

芦塚あきひろ