『未だかつてこんなにカッコいいタクシーやタクシー運転手がいただろうか』
家賃を滞納しながらタクシー運転手している主人公。ある日ソウルから光州まで届けると10万ウォン貰えるという話を盗み聞きし、とある外国人を乗せ光州に向かうが道路が封鎖されていて…みたいな映画。
前情報なしで見た今作。前半のコミカルな軽やかな感じからの後半の怒涛の展開で非常に良い心に残る作品。
前半の主人公とジャーナリストの息の合わなさは言葉が一方通行で通じないところや、詮索しがちな主人公と詮索しないで欲しいジャーナリストの関係性が面白い。
また主人公の一人娘に強くあろうとする姿から家賃滞納し大家に頭を下げているところをみられたりとダメな父親、男としてデキる人間ではない様子が描かれている。
光州に入るあたりから雲行きが怪しくなり、軍隊がいる、街には活気がなく誰も見かけないような感じで、あれ?これは何か違うぞと引き込まれ要素が出てき始める。
街中でデモ隊に会い1人ソウルに逃げ帰ろうとするがおばあちゃんを助けて結果的に残るところが、主人公のダメだけど人間として大切なものを持っているところが見えて良い。
光州で出会った青年通訳も親しみがありとても気にいるキャラクターで、要所要所で主人公らを助けてくれるし、歌謡祭に出るのが夢なんだと掘り下げのシーンがあるおかげでとても人間味のある描き方がされている。
光州でのデモ隊に対する虐殺行為はどのシーンを見ても心が痛むしこれが1980年代のそんなに遠く無い過去にあったことが痛ましい。
怪我人の救助に行きたくても軍隊が発砲し近づけないところに地元のタクシー運転手達とタクシーで駆けつけるシーンは激アツで、こんなカッコいいタクシー見たことないよと1人胸を高鳴らせていた。
主人公1人でソウルに戻る途中で情報封鎖され虐殺されているデモ隊が悪とされている人々を見たあたりからの主人公の葛藤が見ているこちらも苦しい。
でも主人公の人として大切なことは持っているからこそのあの決断だし、良くぞ戻ったと拍手をしかけた。
クライマックスのソウルまでの逃走も激アツで、軍人の1人に隠していたナンバープレートが見つかってしまうが、見て見ぬふりをしてくれて間一髪検問所を突破するが悪の中にも完全に納得しきれていない人もいるんだなと思った。
私服軍隊?私服警察?から最後のカーチェイスをするシーンも最高で追い詰められたかと思えば光州のタクシー運転手達が一斉に登場し命懸けで足止めをしてくれるところが、こんなカッコいいタクシー運転手達…もう本当最高だよ!って1人ときめいていた。
最後の主人公とジャーナリストの別れのシーンはハードボイルド的で名前は連絡先はあえて教えないというのはタクシー運転手としての仕事をしたという矜持か、光州で助けてくれた人々を差し置いて自分だけ受け取るわけにいかないという矜持か…どちらにしても良き。
史実ベースのこれは見るべき映画だなという作品でした。