憎悪と愛情は紙一重。互いの持たざる部分に嫉妬する二組の兄弟姉妹。
一同集結するファミレスから日常の職場、家庭での綻びが少しずつズレを生み出す𠮷田恵輔監督の見事な演出と役者の演技。
Twitterでもお世話になっている背骨さんやモンキーさんからもオススメいただいた𠮷田恵輔監督作品の一つ。
窪田正孝、新井浩文、ニッチェ江上敬子、筧美和子の4人の役者によるアンサンブル。
軽妙なトークの掛け合いが実に面白いですが、彼らが心の奥に秘めた兄弟姉妹に対する嫉妬心や猜疑心、憎悪の感情などがひた隠れする演技が抜群に見応えありました。
特に誰というのではなく、全員が上手い!
新井浩文に至ってはもうその筋の人にしか見えませんでしたが、窪田正孝は兄とは正反対の大人しい性格ながら闇を背負っているという様相。
一方の姉妹役で、江上敬子は頭脳や手際の良さなど、仕事や私生活においては万能にこなす印刷会社社長。
筧美和子は同じく印刷会社でアルバイトしながら、芽の出ないタレント業をこなす容姿端麗な女の子。ただそれ以外は姉には敵いません。
それぞれの兄弟や姉妹が持つ羨望や嫉妬の感情が、表には出さずともひしひしと伝わってきます。
幾野姉妹においてはヒートアップした女同士の戦いは凄まじいものがありました。
金山兄弟について、地元でも有名な悪の兄貴には何をしても敵わない地味な弟という位置づけでしたが、ここの対比構造や位置関係の逆転、兄への対抗心から反抗心に至るまでの繊細な心理変化を窪田正孝は実に見事に演じました。
そして、これはリアルな話で、本作鑑賞直後に滅多に連絡してこない兄貴から珍しく電話かかってきてビビりました。笑
※2021年自宅鑑賞88本目