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犬猿のレクのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
4.1
兄や姉、弟や妹。
親や周りから比較されることで抱く劣等感。
血の繋がった兄弟姉妹だからこその悩み、葛藤が巧みに練り込まれています。
完璧な人間なんていない。
自分にないものを持っていることは憧れでもあり、嫉妬するもの。
でもその相手が兄弟姉妹だからこそ、強がったり言いたいことを遠慮なく言えたりする。
「犬猿」とはそんな兄弟姉妹が持つ特有の感情を的確にリアルに描かれた素晴らしい作品です。


愛と憎しみは表裏一体、なんて言ったりしますよね?
相反する感情があることをきっかけに入れ替わること、秩序だった現象の中から不意に発生する無秩序な現象を心理学の分野で「カタストロフィー理論」と呼びます。
カタストロフィーとは"大変動"や"破局"を表す言葉です。

この作品「犬猿」ではこのカタストロフィー理論が幾つも練り込まれているんです。
そこがすごいリアル!
暴力的な兄が突如優しく思えたり、クソ真面目な弟が実は腹黒く見えたり、不憫な姉が性格までブスに見えたり、いい子だと思ってた妹が最低だったり。
そして物語としては相容れなかった兄弟姉妹が仲直りし、そしてまた睨み合う。
兄と弟、姉と妹、好きと嫌い、愛と憎、これらが対比するように描かれています。
感情の入れ替わりは距離感は勿論のこと、血縁的、遺伝的にも近しい間柄、兄弟姉妹だからこそ起こりやすいのかもしれません。
幼少期と現在とでその心変わりをも描く吉田恵輔監督の上手さがでてましたね。


兄弟姉妹がおられる方には特に心にズシンと来るものがあったと思います。
幾度となく共感し、心を抉られ、頷き、笑える。
そんなリアリティを突き詰めた傑作なので、是非ともより多くの方にご鑑賞いただきたい。
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