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犬猿のaのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
3.8
真面目にコツコツと働く主人公の和成。そんな和成の前に、出所した兄・卓司が現れる。破天荒で目先の事しか考えられない兄へ募る不満。
一方、要介護となってしまった父の代わりに家業の印刷会社で社長を務める由利亜。妹の真子も社員として働いているものの、勤務態度は真面目ではなく仕事も出来ない。なのに顔が可愛く愛想がいいという理由で周りの男性にチヤホヤされ、由利亜が想いを寄せている取引先の社員である和成にも慣れ慣れしい態度で接する。

弟のことを小さい男だと非難する兄、自分と周りに迷惑しかかけない兄を煙たがる弟、頭が良くないのに顔だけで人生を謳歌している妹に嫉妬心を抑えきれない姉、姉は自分よりも頭が良くて何でも持っていると思っている妹。

人は自分の持っていない、優れた部分を持っている他人を見ると、どうしてもそれが羨ましく、ひどく優れているようにみえる。
それがきょうだいだと尚更だろう。図らずも幼い頃から常に比較され、自分自身でさえも無意識に相手と自分を比べてしまう。
しかしどれだけ相手が嫌いであろうが、家族である。なかなか縁を切ることはできない。そして情もある。
その証拠に、和成と真子が遊園地でお互いのきょうだいの愚痴を言っているシーンで、自分は兄(姉)に対しての不満を口にするくせに、相手が自分の兄(姉)の悪口を言うと二人とも否定をするのだ。
「何も考えてないように見えるかもしれないけど、兄貴なりにいろいろ考えてるんじゃないのかな」「お姉ちゃんだってプライドが高そうに見えるけど、それは責任感が強いからだよ」という風に。

家族だから嫌悪する部分もありつつ、家族だから見捨てられない部分もある。『犬猿』という作品は、そんなきょうだいたちの複雑な感情を巧く描いている。
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