ジョー

鈴木家の嘘のジョーのレビュー・感想・評価

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)
4.1
 ひきこもりの長男の自殺。残された両親と妹。そして叔父と叔母。
 父親も母親も妹も、長男がどうであろうと、子供はあくまでも子供。兄はあくまでも兄。
 父親はどうしても男だから、「男なんて放っとけばいい」と突き放すけれど、母親は違う。
 息子の大好物のおたふくソースをかけたオムレツを作り続ける。
「親はねえ、子供を信じるものなのよ」と彼女はつぶやく。

 息子の自殺を気絶して知りえなかった母親に、家族は、叔父の海老の養殖のビジネスを手伝うためにアルゼンチンにいると嘘をつく。手紙のやりとりまでも嘘で固める。その長男宛ての手紙でも、母親は息子をかばう。
「光一は学者肌だから、日本みたいに小さくて息苦しい国よりも、偉大な革命家(チェ・ゲバラ)が生まれた大きな国で、伸び伸び働く力が向いていると思います」

 自分が息子の良さを一番知っていると思っていなきゃ、親なんかやってられないものなあ。
 父親も、息子が自分の保険金の受取人にしていたソープランド嬢を必死に探し、妹は、お兄ちゃんに死んじゃえば、と言ったことをあやまりたい一心で苦悩する。
 ひきこもって結果自殺してしまった彼と、いつまでもつながっていたいという家族の気持ちが、十分伝わってくる。

「未来のために今を耐えるのではなく、未来のために今を楽しく生きるのだ」
 この作中のチェ・ゲバラの言葉を、残された家族に贈りたいという切なる想いにかられた。
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