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デス・ウィッシュのJIZEのレビュー・感想・評価

デス・ウィッシュ(2017年製作の映画)
3.4
犯罪発生率が急増する米シカゴを舞台に外科医の夫が留守中に家族を強盗に襲撃され愛妻を失った事から自衛に目覚め街に蔓延る悪を葬り復讐に転じる様を描いた本格アクション映画‼︎まずあの強面の主演ブルース・ウィリスが表顔は医者役で裏顔は自警団の処刑人というやや力業で押し切る設定と過激描写に定評があるイーライ・ロスが堂々と監督を務めてる経緯からも強烈なハードコア映画を想像していたが蓋を開ければオヤジ臭い中年ブルースの家族想いの魅力が詰まった熱烈なファン映画でした。原題の「Death Wish」は直訳で"死への願望"。まさに父親視点での強盗たちに捧げる忠実な本望のように思える。また本作の原型にあたるチャールズ・ブロンソン主演のオリジナル版『狼よさらば(1974年)』は惜しくも未鑑のため比較はできない。いわゆる本作は元々の善人が自力で悪を滅ぼすヴィジランテもので警察が手に負えない街の犯罪を主演B・ウィリス演じる主人公ポールが深めにフードを被った格好で容赦無く街を脅かす悪人を処刑していく。冒頭でポール家の暖かい幸福が描かれ続く序盤で覆面犯3人組がポールの妻と娘に牙をむきいきなりイーライ・ロス印に染まっていく感じは緩急を付ける意図でも抜けが効いて描かれ良かったです。また本作は"人が安全を警察に委ねるがその警察が来るのは大抵犯罪が起きた後だ"という現行の問題を正しく打ち出している社会派路線の毛色にも感じた。また序盤で灰色のフードを被ったポールが一車両を発砲で打ち負かすがその様子を偶然に動画で撮られ軽はずみに若者がSNSに投稿してるのとかも諸にロス監督のコメディホラー映画『グリーンインフェルノ(2013年)』に通づる相手の信念を弾劾して正義心を逆手にとる箇所ではないか。ちなみに夫ポール家の細かい地形が俯瞰的に交通整備されてるのもロス監督の怪作『ノック・ノック(2015年)』で培われた経験が生きていた。

→総評(愛妻を失った天才外科医の凄まじい煉獄譚)。
総じて新生B・ウィリスのファン映画としては可も不可もない規定通りの作品でした。というのも超直近で『イコライザー2(2018年)』という自警団ものの傑作を観たため題材的にもやや類似してるしやむ負えない。ただ主人公ポールが拳銃の扱いに不慣れであったり天才外科医がゼロから銃を買い揃え自宅の地下室で黙々と準備して処刑人に転生する見方ではこの上なくチャームがあり設定にユーモアが効いた作品だったのではないだろうか。また言うに及ばず拳銃で敵を打ち負かす様もやはり大御所俳優だけあってどれもカタルシスがある。また米公開日がフロリダ州の高校銃乱射事件と被さって拳銃を使った自警行為を称賛する映画だと批判を浴びたという点でもそうじゃないと感じました。つまり作品の主題はあくまで"妻を失い窮地に立たされた人間がそれらの反対勢力から家族を守るためほぼ正当防衛的に立ち向かう"使命の話に思える。ただ中盤~終盤でポールが街のゴミ共をほぼ何の動機もなく排除にかかる明確な理由が欠如したシーンや街の模倣犯が真似事をして返り討ちにあい殺害されるくだりはあながち批判から外れてもない気がするが。作品の不満を云えば強盗サイドに家族を襲撃する意図が微量にでも描かれてないのは逆に犯罪を誘発する意図に感じてしまった。序盤の娘のサッカー観戦で因縁を引っ掛けてきたおっさんもうろ覚えなんだが本編と無関係だった気もする。少なくとも最初の自宅を襲撃した犯行3人組が序盤以降で断絶しており関係性が見えないちくはぐ感は否めなかった。あと正直ポールが一応は姿隠し用のフードをスッポリと頭を覆い被っているが周囲からバレなさ過ぎだろう…というご都合感がなくもなかった。というようオリジナル版との呼応性も配慮し仮にシリーズ化が進めば本作で築いた方向性が即発的に生きる可能性もあるため現行この作品だけの着地はB・ウィリスただ一人が最初から最後まで単独でヒロイズム化された快作でした。
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