Binchois

花筐/HANAGATAMIのBinchoisのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
5.0
耽美な悪夢を延々見せられるような感覚。鳴りやまぬ重厚なBGM、ビビッドな色彩にクラクラする。
露骨なハメ込みや強すぎる照明など、古めかしい撮影技法を敢えて用いている。脚本は大林監督が商業映画デビュー以前に書いたものだというから、強烈な原点回帰の意思の表れだろう。
鑑賞直後に原作を読んだ。すぐ読了できる短編ながらも、若さゆえの懈怠、肉体と精神の対立と昇華といったテーマが見事な筆致で描かれていた。それを3時間弱の映画に仕立てても、不思議と無駄がない。
原作が発表されたのは日中戦争前夜の昭和11年だが、映画では時代が太平洋戦争前に設定されている。愛国歌のリフレインが痛々しく刺さり、反戦映画としても説得力がある。
甘くて苦しい、映画たり得る映画。
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