マクガフィン

カランコエの花のマクガフィンのレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
3.8
高校生の感受性の強さと、それを理解できていない大人の差異から生じた違和感により、疑念が生じたことが上手い。マジョリティ側の意識や心理を軸に据えるセンスに唸らせる。

LGBTの問題が次第に膨れ上がるシークエンスに、セミの鳴き声や吹奏楽の背景音楽や女子トークなどの高校生活の何気ない日常的な描写を挟むことが効果的。LGBTが絡む描写に対する振れ幅が大きくなることと、一気に膨れ上がることが上手い。

伏線は少々説明的だが抜かりない。疑念が確信に変わる大人の嘘によるアクセスポイントも効果的で、感受性が強い高校生にとって、〈嘘〉が社会に対する不安や不信感のメタ的にも。日ごとのエピソードがぶつ切りカット的に暗転することに違和感を感じていたが、ラストに呼応することに関心する。

黒板のエピソードの言葉による発信できない切なさや、好きな女の子のフォローが的外れなことが、悪気が無いだけに何とも言えない。しかし、情報発信者がふざけながら拡散していたのに、自分の許容範囲の一線を越えたら怒ったのか、LGBTの女の子が好きだからか怒ったのかの判別ができなくて残念。伏線の張り方も差が大きく、空気が変わった違和感や特定者を惑わせる描写なのか、経過した後に考えても分かりにくい箇所も。その辺はもっとシンプルでよかったのでは。

本人は自覚していおないが、子供に対する大人の行動とLGBTに対する行動の根本的な問題が一緒に感じる、心象の絶妙な描写が特に印象的に。
マジョリティ側に焦点を置かれていただけに、エンドロールのマイノリティの会話が心に響く。上映館数が少ないが、映画館で見れて良かった。
中川駿監督の長編映画が楽しみに。