MasaichiYaguchi

あみこのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

あみこ(2017年製作の映画)
3.7
本作のポスター画像のヒロイン・あみこが射竦めるように投げ掛ける視線に思わずたじろいでしまうが、それには同様に大きく書かれた言葉「PxUxRxE !!!!!!!!!!!」があるのだと思う。
この作品は、山中瑶子監督が19歳から20歳にかけて、スタッフやキャストをSNSで探し、独学で撮り上げている。
だから劇中の「どうせ死ぬんだから頑張っても意味がない」が象徴するように、既成概念や社会の一般常識に囚われない自由さと、そしてそれらに対する反発も感じられて、観ていて自分の「痛い」10代の頃が蘇ってくる。
或る日、あみこは別のクラスのサッカー部の人気者アオミくんと好きな音楽や同じニヒリストという点で意気投合し、いつか一緒に山登りをしようと約束までしたというのに、それっきりとなってしまう。
普通の人なら、それでフェードアウトになるのだが、普通じゃないあみこは逆にアオミくんに対する思いばかりが募っていく。
月日が経ち、2人の距離が益々遠ざかっていく中、アオミくんが家出をして行方知らずとなって物理的にも離れてしまったことにより、あみこのとんでもない“暴走”が始まる。
或る意味、あみこの“暴走”は男にとって背筋が凍るようなものの気がするが、恐らくあみこにとって“同士”の筈であったアオミの裏切りを問い質したかったのだと思う。
そして勿論、あみこの純な恋心が“燃料”となって彼女を突き動かしたのは間違いない。
あみこは“暴走”の旅を通して何を見出だすのか?
「歳を重ねる毎に人は丸くなる」と言われるが、それは現実の厳しさを思い知ったり、怒る元気もなくなったからとも取れるが、要は周りと波風立てない立ち回りというか、要領の良さを身に付けたからではないだろうか?
だからこそ、本作を観ると何とも言えないむず痒さやほろ苦さを感じてしまいます。