りょう

デイアンドナイトのりょうのレビュー・感想・評価

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
4.0
 日本海に面した秋田県の街で自動車の大企業が発展していたり、東京暮らしだったとはいえ、父親や家族の境遇にまったく気付いていなかった息子がいたり、少しリアリティのない設定がひっかかりました。
 こんな小さな街で自動車の窃盗が頻発しているにもかかわらず、警察の登場するタイミングがかなり微妙です。あの自動車メーカーが警察やマスコミまでも牛耳っていたということでしょうか。その設定で秋田を舞台にすることがどうしても理解できませんでした。しかも、戸籍証明書の記載が不自然だった(はっきり間違っていた)ので、奈々の父親がいつどうなったのか、あの市役所のシーンだけではわかりませんでした。
 それでも、なかなかよくできた脚本だと思います。明石の父親のリコール隠しの告発と児童養護施設の北村の裏稼業の物語が複線的に進行して、明石がその両方にどっぷりとハマっていく過程が丁寧に描かれています。明石の表情が乏しく、何を思っているのかよくわからないところは苦手ですが、他には個性的な登場人物が少なくないので、ほどよく馴染んでいたかもしれません。
 全体的に善と悪の境界が曖昧であることを表現していますが、“Day and Night”というタイトルのとおり、昼の善と夜の悪という側面をわかりやすく交錯させて描いたシーンなんかも興味深かったです。それにしても、明石や北村たちはいつ寝てたんでしょうか。
 最後まで矛盾ばっかり指摘してしまいましたが、そこを無視できれば、俳優陣の演技や藤井監督の演出、撮影・編集も素晴らしく、なかなかの秀作です。次作の「新聞記者」で有名になった藤井監督ですが、この作品はちょっと過小評価されている印象でした。
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