野武士

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂの野武士のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

恥ずかしくない年齢になったからハッキリ言うけどオールタイムベスト10級に好き。たぶん多感な時期に観たせいだろうけど。

原作者の滝本ファンだからこの映画に対して甘くなっちゃうんだけど、やっぱり2000年代の傑作青春映画だと思うわけですよ。アクションが売りらしく寒いギャグも盛りだくさんなんだが、そんなんはどうでも良くて、滝本が抱えていたルサンチマンをキモくない形で昇華したのは大いに評価できる。

何で生きてるんだ、何かしなきゃいけない。俺よりずっと先にいた親友は人生のピークで死にやがった。羨ましい。だからもっと焦る。俺も誰かの役に立ったり愛する人を守って死にたい。
そんな時に謎の怪物と闘う美少女が現れる。これって種類は別として誰しも妄想したことあるんじゃないの?牛肉の万引きで何かをした気になっていた主人公は冒頭でハッキリとチャンスだと言っていた。

『引きこもり世代のトップランナー』滝本作品に共通する、ダメな(引きこもり)男と特別な世界へ連れて行ってくれる(気がする)美少女との関係は夢か現実かわからない塩梅になっていて、(故に都合がいいほど不安になるし何事もなく物語が終わるほどゾッとする)処女作であるこの「ネガチェン」は卑屈になりすぎないバランスでうまく青春してるんだけど、これが後の作品になると、主人公は薬中毒の引きこもりで美少女ヒロインは遂に完全な妄想になってしまう。つまり原作者のありのままの体験談になっていく。これって普通の作家なら逆のプロセスじゃない?なぜ処女作が大衆に寄せて、後の作品がパーソナルになっていくの?
今となっては滝本氏はよくわからんスピリチュアルな占いなりバンド活動なりで、久しく本を出していない(数年前に出したけど)のだけどそんなダメダメで弱い、人間らしい姿も「佐藤くん」らしくて嫌いになれないです。

この物語のラストで主人公は、やっぱりチェーンソー男はただの都合の良い妄想なんじゃないか?無敵の美少女も家庭に問題のあるただの人間なんじゃないか?やっぱり俺って生きてる意味ないんじゃないか?となる訳ですが、やはり滝本作品に共通する、現実への諦めとちょっとは女の子と仲良くなれたことで人生を受け入れ、ネガティブだけどハッピーに終わります。この終わり方がこの後何作も続くのです。まーた一緒のパターンかよ。やっぱお前成長してねーな!俺と一緒じゃねえか!
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