かもいぬ校正

緑の牢獄のかもいぬ校正のレビュー・感想・評価

緑の牢獄(2021年製作の映画)
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20世紀前半、西表島の炭鉱に台湾・朝鮮からの坑夫がいた。この作品は家族で移住した台湾人女性の証言から作り上げた映像である。日本統治期の台湾と沖縄、そして日本との記憶の貴重な掘り起こし。ひとりの台湾人女性の生きた証だ。

当時の習俗で、将来結婚させる約束で養女としてもらわれた「おばあ」が、幼時から兄と思っていた人と結婚する夜の語りはなんとも切ない。私はこの習わしを『トンヤンシー/夫は六歳』という1985年の中国映画で知り、台湾では「シンプア(媳婦仔)」と言う。チキンラーメンの安藤百福もこの結婚をしている。

台湾のシンプアは1970年代に消滅した、と『台湾女性史入門』(人文書院)に記述があるが、中国大陸ではごくごく最近までトンヤンシー(童養媳)が行われていたらしい。
家の存続と男性尊重ゆえの習俗のなか、彼女たちは父親の決めた西表行きに従ってやって来た。台湾女性史を知るうえでも大切な作品だった。