ニコラス・レイ監督、ジョン・デレク出演ということも手伝って同監督出演の『暗黒への転落』を思い出す。ボギーの代わりにキャグニーは判事の役割を果たすかのように拳銃をデレクに向けるが、それは犯罪者だった過去に立ち戻ることでもある。息子を殺しきる『ビガー・ザン・ライフ』。
ボーグナインがキャグニーを、デレクがボーグナインを、そしてキャグニーがデレクに銃口を向けるクライマックスの三すくみの痛ましさ。
本編に関係ない細部だけど、ヴィヴェカ・リンドフォースが持つ木製のバケツに、並々と注がれた牛乳の白さが画面にしっかりと映るのがとても印象的だった。これで思い出したのが『パブリック・エネミーズ』冒頭の脱獄劇の直後、隠れ家をあとにするデリンジャーに同行を諌められる女性の背後で白いシーツがはためているショット。これも『追われる男』の牛乳と同様に忘れない細部。
思えば『パブリック・エネミーズ』の風にはためくシーツは、西部劇的な光景だったと言えるかもしれない。