森崎

METライブビューイング2017-18 モーツァルト「魔笛」の森崎のレビュー・感想・評価

4.0
「誰かー!助けてくれー!」
大蛇から逃げるは主人公タミーノ、初っぱなからピンチに陥り逃げている。それを救うは三人の侍女、彼女が仕えている夜の女王はタミーノにこうお願いします。
「娘のパミーナがザラストロにさらわれた、救出してほしい」
しかし夜の女王はこの物語の本当の悪役であり、叡智を司る神官ザラストロと敵対し命を奪おうとしている存在なのでした。

主人公が最初からピンチになっていたり悪玉の方が先に登場しまるで被害者のように振る舞うといった一味違う話の組み立てが面白い。オペラといっても歌唱以外に台詞もあって珍しい印象。歌唱はなんといっても夜の女王。ソプラノの超絶技巧を要するその曲はほんとに身体が楽器にでもなったみたいに高音が響いて美しい、転調もありながら続く歌に自分は自分で腹の底から凄いという驚きと感動が込み上げているのを感じる。

モーツァルト作曲の「魔笛」、初鑑賞でした。
CMか何かで一度は耳にしたことがあるだろう二幕の夜の女王のアリアをはじめ、親しまれている曲が多いそうな。世界中で多くの演出家により過去何度となく上演されているこの作品を今回はミュージカル「ライオンキング」を手がけたジュリー・テイモアが演出。たくさんの生き物のパペットと強くもこっくりとした単色で魅せるセット、大がかりな舞台装置の数々がとにかく豪華。メイクも白塗りや京劇や歌舞伎を思わせる色づかいが面白い。
どちらかというと内容はベタっちゃベタ。キャラクターをそれぞれ掘り下げてはいないから物足りないところはあるけどただ観ているだけでも楽しめる。登場人物が多いからか誰かが出ずっぱりということは無く、個々の曲をどう見せるかや転換が重要かも。タミーノらを何度か導く三人の童子を演じている少年三人(全身白塗り)が三人ともちょっとだけ顔が似て見えて声変わり前のまっさらな歌声とも相まって神秘的と言いたいところなんだけど、緊張しているのか半笑いなのか嫌々やってるのか絶妙にユルい表情とぽっこりお腹がどうもシュールだったなあ…。
森崎

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