みさご

ラスト・シャーマンのみさごのネタバレレビュー・内容・結末

ラスト・シャーマン(2016年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

自分を見失い、「死んだ」青年の再生の物語。
21-22歳で「死んだ」と語る彼は、実際に命を絶つ前に「執行猶予」を設けた。彼はアヤワスカを用いるシャーマンのもとへ、自分自身を取り戻すために足を運ぶ。面白いと感じたのは、徐々に彼が呪術的世界観の中に入って行くことである。初め彼はインチキだと思っていたが、ともあれ彼はその世界にまず一歩踏み出した。藤原潤子「呪われたナターシャ」(2010)(人文書院)にある、「呪術の『リアリティ』を疑いつつも、周囲の促しによって問題解決のための呪術的手段が実際に試された場合、呪術の世界への一歩がひらける」という言葉を思い出した。
しかし彼は盲信的になったわけではない。アヤワスカは崇拝の対象ではないとし、「必要なものは全て自分の中にある」と彼は語る。ただし、それを植物の精霊から学んだとも言っていることは注目に値するだろう。特に医者の間に生まれた「科学的」家庭の人間であることを考えると。
教訓的なことについて述べると、何よりも彼が行動したということに意味があるだろうと思う。近年、いじめやうつといった問題が深刻化しているように感じる。松本人志が「死んだら負け」という発言をして大衆的な話題を呼んだことからもその注目度が伺える。個人的にこの発言について同意するつもりはないが、この映画の主人公ジェームズのように「執行猶予」を設けて、命を絶つ前に自分で行動を起こすことが、自身の人生にとって、大切なのではないかと感じた。「まだ生きてる。それが大事だろ?」
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