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僕のスウィングのleylaのレビュー・感想・評価

僕のスウィング(2002年製作の映画)
4.0
トニー・ガトリフ監督の他の作品と同様に、今作でもガッチョ(よそ者)の目を通してロマたちの暮らしや文化を描き、たくさんのジプシー音楽が流れる。

夏休みに祖母の家に預けられた10歳のマックスが、近くのマヌーシュ(フランス北部やベルギーで生活をしているロマ)が住む地区で、少女のスウィングと出会う。そこでギターの名手ミラルドのギターを聞き、ジプシーの音楽に魅了され、ギターを習い始める。

中性的な魅力を放つロマの少女スウィングと、ほどほど裕福な少年マックスとの淡い初恋と別れ。川で魚を捕ったり、蓄音機をのせて船を漕いだり、ハリネズミを見つけたり、大自然の中で遊ぶ情景がみずみずしい。差別の壁がないのがいい。

トレーラーハウスの中で奏でるジプシー音楽がカッコよかった!世界的に有名なジャンゴ・ラインハルトというロマ出身のギタリストがジプシー音楽とジャズを融合させ生み出した「マヌーシュ・スウィング」が流れます。

ウディ・アレンの「ギター弾きの恋」でショーン・ペンが演じたのが、ジャンゴ・ラインハルトをモデルにしているのだとか。とはいえ、今作にジャンゴが出ているわけではありません。

ジャンゴの音楽を継ぐチャボロ・シュミットがミラルド役で、彼も世界的に有名なギタリストなのだそう。「心と耳で奏でろ」と主人公マックスに伝えます。楽譜のないジプシー音楽の基本は、心と耳なんですね。

ジプシー音楽はその土地によって変化するけど、フランスあたりで融合するとやっぱりオシャレになるんだなぁ。

ナチスによる収容所から逃げてきたお婆さんの話や、文字が読めないロマにも触れている。これらは監督の伝えたいことのひとつであって、ただの初恋や音楽の物語ではないことをふと思い知らされギクリとするのでした。
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