FumiKawaguchi

僕のスウィングのFumiKawaguchiのネタバレレビュー・内容・結末

僕のスウィング(2002年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

初恋と音楽。そんな映画。だけどその中に、歴史的・社会的背景も示されている。「音楽は楽譜じゃない。耳と心で感じるもの。」その言葉通り、トレーラーの中でのセッションは素敵♪♪あのマヌーシュ・スウィングのセッションは生演奏なんだとか!!スウィングギターの名手である、チャボロ・シュミットもマックスのギターの先生、ミラルド役で登場。こんな先生に教えて貰えたら幸せだよねぇ~☆ロマ民族というジプシーたちの文化や悲しい歴史も盛り込み、その中において、ミラルドの死というものを描いている。初恋のほろ苦さや切なさと、音楽の素晴らしさ。その中に、ロマ民族の過去と未来を映し出しているのは、この作品の監督トニー・ガトリフ自身がロマ民族だからなのだろう。古きものを守りつつも、新しい時代へと変貌を遂げようとする人々。その中で、死者の事を語らず、その人の遺品も残さないというロマの人たちの掟の中から、スウィングはミラルドの遺品である ギターの焼け残りを、マックスと共に川へと流す。最後の水色のドアを閉めた後の窓にいつしか張り付く手のひら。この「スウィングの手のひら」という間接的な描写によってミラルドとマックスとの別れに対する精一杯の悲しみが伝わってくる。ミラルドが教えてくれた「おまじない」を試すマックスと、それを手伝うスウィングが作ったピラミッドにチョコチョコと歩み寄るハリネズミの映像がカワイイ。ここら辺、初恋のほのぼのした雰囲気が映像として表現されいるし、ミラルドが天に召されるときの空を飛ぶシーンも素敵だと思う。この監督、色んな意味で間接描写がとても上手いんだなぁ。きっとミラルドは、音楽と共に精一杯の人生を送ったのだろう。
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