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判決、ふたつの希望のyukacafeのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.2
10年近く前、ヨーロッパの短距離便でレバノン人の家族と席が隣になり、色々な話をしたことがある。レバノンが地理的にどこなのかもわかっていなかったが、「とても良いところだから、いつか遊びに来てほしい」と笑顔で言われたその言葉の裏にどれほどの重みがあったのか、この映画を観て初めて理解できた。

レバノンは中東で珍しくキリスト教徒が多数派の国であるということ、17年にも及ぶ内戦の歴史があったこと、政治的、宗教的にも複雑な背景があることを知った。

鑑賞後、来日した監督のインタビュー映像も観たのだが、「映画をつくる時は社会を描くのではなく、個を通して社会を描くもの」と言っていて、この作品で描かれていたトニーとヤーセルから、レバノンがどのような歴史を持ち、人々が暮らしているのか、その一端が見えた気がした。実際、些細な口論から徐々に背景が浮き彫りになっていく構成が素晴らしかった。

監督は女性の視点を入れるために、判事を敢えて女性にし、賢く客観的なキャラクターにしたらしい。中東社会における女性の抑圧を解放し、大きな役割を担うことが監督の夢なのだという。

生半可な知識ではこの作品で描かれていることを完全には理解できないが、映画を観ることで現地の風景、暮らしを体感できること、ニュースでしか知らない、ニュースですら取り上げられないことを知ることができるのは、大きな醍醐味の一つだと思う。
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