判決、ふたつの希望の作品情報・感想・評価・動画配信

判決、ふたつの希望2017年製作の映画)

L'insulte/The Insult

上映日:2018年08月31日

製作国:

上映時間:113分

ジャンル:

4.0

あらすじ

「判決、ふたつの希望」に投稿された感想・評価


キリスト教徒であるレバノン人男性とパレスチナ難民の男性との口論が裁判沙汰となり、やがて全国的な事件へと発展していく様子を描く。

レバノンの首都ベイルート。パレスチナ難民でイスラム教徒のヤーセルは現場監督として住宅の補修作業にあたっていた。するとアパートの住人でキリスト教徒のトニーとトラブルになってしまう。翌日、ヤーセルは上司に伴われ、トニーのもとへと謝罪に赴く。

ささいなケンカに宗教や政治が絡まるとこうなるのか
揉め事の背景が国やその地域によって根深いものだと感じました。
2022/107
eriiko

eriikoの感想・評価

3.9
中東複雑すぎるから、歴史を知らないと分からないかもしれない。

人間差別する側にもされる側にも簡単になれる。
結局判決はどうでもよかったのだろう

憎悪に対しては憎悪で返すしかないし侮辱に対しては報復で返すしかない。結局彼らにとって有罪か無罪かはもうどうでもいい話でありただただ謝罪を求めただけなのであろう。つまり判決の前にすでに答えは出ていたということ。ごめんなさいと素直に言える愛嬌が全ての人間にあれば世界は割と簡単に丸く収まったりして。
たしかに、そこに希望はある

 反パレスチナのキリスト教徒レバノン人トニー(アデル・カラム)と、ムスリムのパレスチナ難民工事現場監督ヤーセル(カメル・エル・バシャ)の間に起こった工事をめぐる些細なトラブルが、国家を二分する裁判に発展していく、法廷ドラマ。

 アカデミー賞外国映画賞にノミネートされたレバノン映画。これはいい映画。「傑作」っていうようなズンとくる感じじゃなく、スリリングなオープニングから結末まで、淀みない流れに感情が乗せられて、気持ちよく見終われる作品。

 吉田恵輔監督の「空白」のような頑固親父の諍いが、弁護士たちの思惑もあってあれよあれよと民族間の論争にまで発展。本人たちはこんなはずじゃなかったと戸惑うばかりだけど、引くに引けず。この話の広がっていく流れが恐ろしくスムーズで、それゆえに自分じゃどうすることもできない感が半端ない。

 それが、あることをきっかけに収束に向かっていく終盤は、若干予定調和な感じはするけれど、そこまでに二人の人間味が十分表現されているから、素直に感動できる。そして、その「希望」が広がることを願わざるを得ない。
一人旅

一人旅の感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ジアド・ドゥエイリ監督作。

ベイルートを舞台に、ささいな口論から国を揺るがす法廷闘争に発展してゆく二人の男性の姿を描いた人間ドラマ。

アカデミー賞外国語映画賞にレバノン代表作品としてノミネートされた“法廷+人間ドラマ”の力作で、クエンティン・タランティーノのアシスタント・カメラマンとして腕を磨いてきたレバノン出身:ジアド・ドゥエイリがメガホンを取っています。

レバノンの首都ベイルート。キリスト教徒のレバノン人:トニーは身重の妻と暮らしている。ある日、トニーは自宅アパートのバルコニーからの水漏れが原因でパレスチナ難民の工事現場監督:ヤーセルと口論してしまう。後日ヤーセルは謝罪に訪れたが、その時にトニーが放った言葉に激昂したヤーセルは我を忘れてトニーを殴打してしまう。怪我を負ったトニーはヤーセルを提訴、やがてメディアに取り上げられたことで両者の法廷闘争は国を揺るがす事態に発展してゆく…という“異なる宗教・民族同士の法廷劇”が映し出されていきます。

キリスト教徒のレバノン人とイスラム教徒のパレスチナ難民。両者の裁判の進展と共に炙り出されていくのは中東レバノンと周囲の国々の凄惨な歴史。裁判は、両者の表面上の衝突の考察を越えて、そこに至った背景を深く探っていきます。いわば、両者の一連の口論と殴打事件は氷山の一角。その下に眠る大きな氷の塊を紐解いていくことが本作の肝であり主張であります。

国民の40%がキリスト教徒、50%超がイスラム教徒という特異な宗教構成をもつレバノンで、かつて勃発したレバノン内戦という凄惨な歴史。その暗い過去が現在の両者の人生に未だ影を落とし続けているという揺るぎない事実。忘れ難い過去の重みに囚われ続ける両者が辿り着く答えは――。

民族や宗教に基づき相手を見ることは、その人を「個」ではなく大きな「集合体」として認識することを意味します。多様化する現在の世界に求められるのは、「集合体」ではなく「個」同士を前提とした人と人の繋がり。歴史の重みに邪魔をされ正しく相手に向き合えなかった両者が最後に見せる、ささいな視線と笑みの衝突が、過去を乗り越えた先の未来への希望を象徴しています。
ちろる

ちろるの感想・評価

4.1
振り上げた拳を下ろすタイミングを忘れて、プライドをかけた戦いがいつのまにか取り返しのつかないところまで辿り着く。

謝罪を求め続けたトニーも、それ以上の暴言を吐き、そこに謝罪する義務が生じてしまったわけだけど、思想と宗教と歴史が積み重なり、苦しみの重さはおなじだったのだということを知るのはとても痛みが伴う。

謝罪とは言葉では無くてもいいのだ。
全く言葉がなくても伝わる行為が全てをあっという間に解かしてしまうことだってある。

些細なちいさな喧嘩が、やがて異教徒同士の裁判に発展するだなんて誰が予想しただろうか。

ふたりの主人公の一方はキリスト教徒のレバノン人、片やレバノンで働くパレスチナ難民。
物語の舞台はレバノンの首都ベイルート。
住宅街の一角で違法建築の補修作業を行なっていたパレスチナ人のヤーセルは、頭上から落ちて来た水滴の元を探るが、それが住宅の排水溝の破損が原因だとわかったヤーセルは、修繕補強を始めるが、そこに住むレバノン人トニー・ハンナはいきなりそれを破壊してしまう。
きっかけは、水掛論から始まり謝れ!そこから民事訴訟へ・・・。
更にそれは周りを巻き込み、レバノンの歴史や、今のレバノンをが抱える問題を浮彫りにしていく。
ものすごい緊張感。
かといって堅苦しくも難しくもなく、退屈させない展開で話は進み、よくできた法廷映画である。

小さなきざこざが、民族紛争が絡まったせいで侮辱の言葉によって拗れにこじれてしまう。

暴力とは何か?

中東問題として描いているがために観るのを躊躇する人もいるがこれよりもライトなものでアカデミー賞のあの事件があったので照らし合わせてみる。
アカデミー賞の中で突然暴力を振るったウィル・スミスと言葉の暴力を放ったクリス・ロックの事件もきっかけは突き詰めると「言論による暴力」と「身体的暴力」のどちらに非があるのかという問題に行き着く。

これがただの映画としてのバックグラウンドなだけであって、本質となる部分はどの国にでも置き換えることができる普遍的なものであり、そこをテーマにしている。
作品はいわゆる法廷劇の形をとるが、話が進むに連れて、法廷は主人公二人にとって白黒つけるべき場所ではなくなってくるところもポイントである。
事態が大きくなりすぎて国家や宗教の怨嗟を背負わざるを得ない二人が決断したものは何だったのか・・・
物語の前半、中盤そして後半で2人それぞれに対する印象が変わってくるのが面白い。
歴史の重みに邪魔をされ正しく相手に向き合えなかった両者は互いに違ったものが見えてくる。
その展開にわたしたちも心揺さぶられる。
この世から争いがなくなることは一生ないとしても、お互いを理解しようとする努力を心がける人間でありたいと思わせてくれる作品であった。
chaooon

chaooonの感想・評価

4.0
去年の忘れ物レビュー…✍️

レバノン出身の監督の実体験を元にした物語。

きっかけはバルコニーの水漏れ。
そんな些細な口論が、国家を揺るがす法廷劇にまで発展していく。

おっさんたちの意地の張り合い。
そんな風に見えてしまう、序盤の争い。
ふと漏らした悪態から口論が発展し、触れてはいけない言葉まで。
それは人としの尊厳に関わる問題。

「謝って欲しいだけ」
なぜ形だけでも謝罪ができなかったのか?
そこには個人間の諍いでは収まらない、紛争や民族、政治、宗教、人種、難民問題…といった複雑で繊細な問題を孕んでいる。
レバノンのパレスチナ難民。
法廷で明かされていく過去。
ショッキングな映像や事実と共に、この諍いの根幹が見えてくる。
この辺はかなり辛くて胸をグサグサにされました😭

裁判が激化していき、メディアが騒ぎ立て、大きくこの諍いが膨らみ切ったところで、見えてくる人と人としての対話。
結局のところお互いの痛みを自分のものとして理解して、赦せるのかという根源的な部分。
パレスチナ問題には疎くて難しく感じる部分もあったけど、ストーリー運びやメッセージの描き方はそんな私でも感情移入して観ることが出来たのでよかった🥺

このレビューはネタバレを含みます

属性とか枠組ではなく"個"として相手と向き合うこと

レバノン人とパレスチナ難民の2人の些細なもめごとが国を揺るがす事態に発展していく。当事者の意思を越えていくところが怖かった。良い法廷劇でした
nobu0326J

nobu0326Jの感想・評価

4.0
怒りが増幅されどんどんどんどん取り返しのつかないことになっていくお話。
パレスチナ人の工事現場監督のヤーセル、レバノン人で自動車修理工場を経営するトニー、些細なことが原因で法廷で争うことになってしまう。

根底に流れる解決する見通しが立たない民族紛争問題。
イスラム教とキリスト教の宗教問題。
裁判とは?
正義とは?
当事者の二人をさておき裁判を取り巻く人々がどんどんヒートアップ、そこにあるものは怒り、絶望、諦め、侮辱、殺戮、悪い言葉しか思い浮かばない。

そして二人は気づく。
人として赦し合うという事を。

取り扱われるテーマはものすごく重く絶望感にとらわれがちになってしまいますが最後にふぅ〜っとさせてもらえることに救われる映画「判決、ふたつの希望」(2017年作)なのでありました。
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