パレスチナ問題の核心に触れた作品。レバノンの情勢とかあまり詳しくはなかったけれど、根本となる宗教や思想の違い、レバノン人とパレスチナ人の確執などとてもわかり易く描かれていたと思う。
トニーとヤーセル。どちらの立場で見てもやるせない。ただただ公正な裁判を望みながらも、その根っこにある深い憎しみや怒りの感情に心乱される。
戦争や暴力は憎しみしか生まない。そして憎しみは連鎖する、悲しいくらいに人の人生を蝕み新たな憎しみを生む。憎しみの感情が差別や偏見の思想を人に植え付ける瞬間そのものが作品全体を通して描かれているように思った。
この裁判は諍いを起こした市民のどちらが悪いかではなく、発端になった差別的な発言と怒りによる暴力を生み出したものは何か。その根本を問いかける裁判だったのではないか。
怒りや憎しみの連鎖を断つのは、赦し合うことと理解し合うこと。決して簡単なことではないけれどいつの日か、そんな風にお互いがお互いを理解し合える世界がくることを願う。
ラストの展開がすごく良かった。
最近の法廷もの当たりが多くて勉強になる、まさに一石二鳥♪