このレビューはネタバレを含みます
監督・脚本・主演を務めたアナ・アセンシオが自身の経験をもとに手掛けたサスペンス・スリラー作品である本作は、ニューヨーク・マンハッタンのボロアパートでベビーシッティングや客引きでその日暮らしの極貧生活を送っていた移民女性のルシアナ・アルハンブラが、バイト仲間のロシア人女性オルガから紹介された高額報酬のアルバイトに参加したことで悪夢のような一夜を経験するという内容となっているのだが、簡単に言ってしまえば、移民女性が謎の裏バイトを経験した一夜をドキュメンタリー風に映し出しただけの、とてもシンプルな一作。閉鎖的な地下空間に詳細の全くわからない裏バイト、そして裏バイトに参加した移民女性の怯えた様子や、ゲストの指名で参加者が一人ずつ奥の扉へと消えていく光景を目の当たりにした主人公のルシアナが恐怖に駆られる中、ついには指名を受け、命を脅かすゲームに強制的に参加させられるというものとなっていて、ニューヨークという夢に溢れた街でその日暮らしの生活を送る立場の弱い移民女性が主人公であることや、主人公と同じ境遇の移民女性の命が軽んじて見られている現実を映し出した点は良かったとは思いますし、これがアナ・アセンシオが経験した実体験から着想を得たものであることや、緊張感の煽り方も評価に値するでしょうし、シンプルな作品ながら観る価値は大いにありましたね。ただ、オススメするのは到底難しいものとなっていて、拍子抜けする終幕には物足りなさを感じてしまいますし、何よりも虫が苦手な人には不向き。決して悪い作品ではないんですけどね。もう少し何かしらのドラマが欲しかった。
