英雄トニー・スタークの意志を託された高校生ヒーロー、ピーター・パーカー。
少年が進むべき道は、自分を捨て去り英雄へと成り代わる道か、託された意志から目を背け日常を取り戻す道か、はたまたその両方か…
ホームカミングに続き、今作も相変わらずヴィランが魅力的でカッコイイ!
最後の最後までトコトン姑息なキャラクターを貫き通し、どこまでも悪足掻きをする往生際の悪さから、倒されたとしてもタダでは終わらない強い執念が感じられて、単なるズルいやつで済まされなかったのが最高だった。
トム・ホランド版スパイダーマンは、2作ともヴィランがトニー・スタークに強い怨みを持っているけど、トニー・スタークを尊敬するピーター・パーカーには友人以上の好意を抱いているのが特徴的。
世界的に英雄視されているトニー・スタークを、天才というだけで全肯定することのできない冷酷な人間性を身を以て体験した経験があると同時に、トニー・スタークによく似た若き天才だけれど、ピーター・パーカーのような親近感の湧いてくる純粋な心をもった身近な天才であったならば、今とは違った自分がいたのかもしれないという可能性を、ヴィランの心に抱かせるのだと思う。
こうした絶対的な英雄のもつ善悪の両面を見せることで、主人公に葛藤させ、最終的に誰でもない自分自身の道を決断させる構成はユニークで面白いし、かなり好き。
今作でひとつ、大きな不満点を上げるとするならば、主人公の意志をあまり感じられなかったこと。
最初から最後までずーっと周りの人間に振り回されっぱなしで、正直ピーターがどんなセリフを喋ってたかとか、ほとんど印象に残ってない。
クライマックスに向けて決断を下すシーンもあっさりしていたし、そこに至るまでの展開も淡々としていて、情緒が足りていない。
アメコミ映画らしく笑えるシーンは沢山あったけど、親愛なる隣人らしい小粋なジョークは少なめで、なんだかスパイダーマンが遠い存在になってしまった気がして、ちょっと寂しかった(アベンジャーズを観てから言うことではないだろうけど…)。
次回作が楽しみなことには変わりないが、今後はひとりの少年としてではなく、ピーターがどんな英雄に成長していくのかに注目してみていきたい。